• 総裁選で岸田氏の推薦人、外務副大臣や環境相を務めた経歴
  • 鈴木善幸元首相は父、麻生氏の義弟にあたる

自民党の岸田文雄総裁は、新内閣の財務相に鈴木俊一元五輪相(68)を起用する方向で調整に入ったとFNNが伝えた。財務相の交代は9年ぶり。

  報道によれば、麻生太郎副総理兼財務相は党副総裁に起用される。鈴木氏は 新型コロナウイルス感染症の世界的大流行で打撃を受けた経済の回復と、悪化した財政の健全化の両立を託される。

  鈴木氏は、総裁選で岸田氏の推薦人代表となった。五輪相のほか、外務副大臣や環境相、党総務会長を務めた経歴がある。岸田氏が率いる派閥「宏池会」出身の鈴木善幸元首相を父に持ち、麻生氏の義弟にあたる。岩手2区選出で当選9回。

  衆院選で野党が主張する消費減税には否定的見解を示している。NHKによれば、総務会長時代の2020年3月の会見で「消費減税で地方に回るカネが減額されれば影響が大きい。消費税を財源に幼児教育の無償化なども始まっており、私は慎重であるべきだと思う」と述べた。

戦後最長の麻生財務相が退任へ、国際舞台で存在感も財政再建進まず

鈴木俊一元五輪相 Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  岸田総裁は数十兆円規模の経済対策を年内に策定するなど機動的な財政政策を堅持する考えを示しており、鈴木氏は財政運営で難しいかじ取りを迫られる。コロナ禍で歳出圧力が増す中、政府は25年度中としている基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化目標について、21年度内に目標年度を「再確認」する方針だ。

  UBS証券の足立正道アナリストは鈴木氏が「麻生氏と同じようなスタンス」を取るだろうと分析。財務省の官僚の意見を尊重し財政健全化を支持しつつ、「政治圧力を受け、徹底はできない可能性がある」とみる。

  野村証券の美和卓チーフエコノミストはコロナ禍の中ですぐに緊縮財政となる可能性は低く「大きな路線変更はないのではないか」と指摘した。

  首相や外相も歴任した麻生氏に代わり、国際金融の舞台で日本の存在感を示せるかどうかも課題だ。10月には国際課税ルールの最終合意を目指し、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開催される。

  鈴木氏は総裁選へ向けた岸田氏の決起大会で推薦人代表としてあいさつし、「岸田さんはこれまで外相5年の間に国際社会において多くの人脈を築き上げてきた」と賞賛している。