【パリ時事】来年のフランス大統領選でマクロン大統領(43)と共に決選投票に進むとみられている、極右政党「国民連合(RN)」を率いるマリーヌ・ルペン氏(53)の支持率が下落している。代わりに支持を集めているのは、ルペン氏よりもさらに極右的と評される無所属の政治評論家エリック・ゼムール氏(63)。ルペン氏より強力なマクロン氏の対抗馬になる可能性がある。

 ルペン氏は実父ジャンマリ氏(93)が土台を築いたRNの人種差別的なイメージ払拭(ふっしょく)に努め、ソフト路線に転向する「脱悪魔化」を進めてきた。今年4月の世論調査で、一時は若者の間でマクロン氏を上回る支持率を得たものの、6月に実施された広域地方自治体「地域圏」議会選でRNは惨敗した。専門家からは「軟化戦略は逆効果だった」と指摘する声が上がった。

 反イスラムで知られるゼムール氏は保守系紙フィガロの政治記者などを経て、テレビのコメンテーターや作家として知名度が高い。寛容な移民受け入れ政策に反対し、9月28日にはツイッターで「40年間移民を拒否してきた日本がモデルだ」と主張した。過去には人種差別的発言で物議を醸したこともある。

 経済誌シャランジュ(電子版)が9月28日に報じた世論調査によると、大統領選初回投票でマクロン氏に投票すると答えたのは約23%。ルペン氏は16%で、6月初旬の28%から大きく後退した。一方、6月上旬に出馬の意向を示唆したばかりのゼムール氏は今回急浮上し13%を獲得した。

 仏メディアは、ソフト路線への転向に失望したルペン氏支持者がゼムール氏支持に流れたと指摘している。ゼムール氏を「保守派の論客」として評価する右派の有力野党、共和党の一部支持者も取り込んでいると分析される。

 戦略の立て直しを迫られるルペン氏は9月中旬、記者団に対し「私は右でも左でもない」と発言するなど腰が定まらず、迷走中。同28日には、移民の入国条件厳格化の是非を問う国民投票の実施を公約に掲げたが、フィガロ紙は「10年前からほぼ変わらない主張を繰り返している」と冷ややか。「いつまでも政権を掌握できない党の力不足が露呈した」と切り捨てた。