静岡県熱海市で発生した大規模な土石流から3日で3か月です。26人が犠牲となり、今も1人が行方不明となっていて捜索が続けられています。避難生活を続けていた被災者のほとんどは自宅に戻ったり公営住宅などに移ったりしていて、生活の再建や高齢者の孤立化を防ぐ取り組みをどのように進めていくかが課題となっています。

ことし7月3日、熱海市の伊豆山地区で発生した大規模な土石流では26人が犠牲となり今も1人が行方不明となっていて捜索が続けられています。

住宅地に流れ込んだ土砂の大部分はこれまでに除去されましたが、県によりますと住宅の被害は全壊53棟、半壊11棟を含む132棟にのぼっています。

熱海市は市内の複数のホテルを避難所として活用し、一時、最大でおよそ580人が避難していましたが、ほとんどの人は自宅に戻ったり公営住宅や民間の賃貸住宅を活用した「みなし仮設」に移ったりしたということです。

ただ、住み慣れた地域から離れて暮らす人もいて、生活の再建や高齢者の孤立化を防ぐ取り組みをどのように進めていくかが課題となっています。

一方、県と市は今回の土石流について崩落の起点にあった「盛り土」が被害を拡大させたとみていて、犠牲者の遺族や被災者など70人は盛り土を造成した不動産会社の代表や今の土地所有者などに対し賠償を求める訴えを起こしています。

また、県と市は盛り土をめぐるこれまでの行政側の対応をそれぞれ調査していて、今月中旬にも結果を公表する方針です。

ホテルを避難所に活用 異例の対応でみえた課題も

今回の災害で熱海市は、被災地の道路が大量の土砂で寸断されるなか、被災者の支援には避難所を集約し、新型コロナウイルスの感染対策も取ることが必要だとして、急きょ、市内のホテルを避難所として活用することを検討し、ホテル側に打診したということです。

これに対しホテル側は、地元への貢献とともに新型コロナの感染拡大の影響で予約が通常よりも少なかったため要請に応じ、予約をキャンセルして避難所として被災者を受け入れたということです。

ホテルでは世帯ごとに部屋が用意され食事も提供されたということで、市によりますとこれまでに避難生活中に体調を崩すなどして亡くなる「災害関連死」とコロナの感染は確認されていません。

一方、避難生活の支援にあたった県の専門家によりますと、日々の暮らしがホテルの個室中心となった結果、ほかの住民との接点が減り孤独感に悩む高齢者がいたほか周りの人が健康状態を把握しづらいという課題もあったということです。

このため住民の交流の場として体操の時間をつくったり、住民みずからが高齢者に弁当を配付して健康状態を確認したりする取り組みを進めたということです。

県の被災者支援コーディネーターの鈴木まり子さんは「個室でバラバラになっているため被災者一人ひとりの状況を見渡せない難しさを感じた。高齢者の孤立を防ぐためにも、避難所を自主的に運営する取り組みが重要だと思う」と話していました。

専門家「常識に風穴。ホテル活用で避難所の3密回避も」

災害時の避難に詳しい同志社大学の立木茂雄教授は、ホテルを避難所として活用した熱海市の取り組みについて「避難生活によるストレスで災害関連死が起きるという課題が長年指摘されてきたが、避難所を快適な環境で運営できるという前例をつくり、これまでの常識に風穴を開けた」と評価しています。

そのうえで「全国の防災担当者はコロナ禍で災害が発生した際、これまでは避難所のスペースが足りないことに頭を悩ませてきたが、3密を回避するためにホテルを活用するのは合理的で画期的だと思う。感染拡大の影響で経営にダメージを受けているホテル側にもメリットがある」と指摘しました。

一方、課題については「各地の災害現場を見てきたが、被災者が避難所の運営について話し合い課題を共有している避難所は適切に運営されていた。こうした自主的な取り組みをサポートすることが必要で、特に単身の高齢者には避難所のホテルに入った段階から寄り添う必要がある」としています。