【ソウル時事】来年3月の韓国大統領選に向け、与党「共に民主党」は決選投票を行わずに今月10日、李在明・京畿道知事を公認候補に選出する見通しだ。ただ、李氏をめぐっては首都圏の城南市長時代の都市開発事業に関する疑惑が浮上。予備選には影響しなかったが、保守系最大野党「国民の力」が攻勢を強めており、本選での火種になりそうだ。
予備選はこれまでに九つの地域別投票と2回の国民・一般党員投票を終了し、李在明氏の累計得票率は54.9%。9、10両日に京畿道、ソウルでの投票と3回目の国民・一般党員投票の結果が発表されるが、2位の李洛淵元首相が李在明氏の過半数を阻止して決選投票に持ち込むのは困難な情勢だ。
ただ、李在明氏の前途は必ずしも明るいとは言い難い。9月中旬、李氏が城南市長だった2015年に始めた官民合同による都市開発事業で、特定企業が出資割合をはるかに上回る利益を得ていたことが表面化。同企業の100%株主は李氏と顔見知りの元記者で、癒着の疑いや、李氏が事業計画段階から企業側が過大な利益を得ることを分かっていた可能性が指摘されている。
検察は李在明氏側近とされる市都市開発公社の元幹部を3日に逮捕し、捜査を加速させている。李氏は「元幹部は側近ではない」と主張。「腐敗した既得権勢力が独占していた利権を市が取り戻した事業だ」と反論し、予備選を乗り切った。
しかし本選を見据え、この疑惑が早くも攻撃材料になりつつある。4日の記者会見では、法的責任を否定する一方、「国民の気持ちを傷つけた。管理責任は市長だった私にある」と遺憾を表明し、神妙な態度を見せた。
野党側は政府から独立した特別検察官による捜査を求めており、大統領選の野党有力候補の尹錫悦前検事総長は「候補を辞退し捜査を受けよ」と要求。尹氏陣営は「与党は、大統領候補に李在明を選出したことを後悔する人たちが出てきて内紛に陥るだろう」とけん制している。