【パリ時事】任期満了に伴うフランス大統領選まで半年となった。最近の天然ガスの急激な価格上昇に伴う電気・ガス料金の大幅値上げを背景に、原子力発電の推進を訴える声が強まっている。世論調査でも原発に好意的なイメージを持つ人の割合が増加しており、2035年までに原発依存度を50%に引き下げるという政府方針に影響を与える可能性もある。
マクロン大統領は6日、スロベニア北西部クラーニで行われた欧州連合(EU)首脳会議で、「フランスは原発のおかげで他国ほど化石燃料に依存していない」と発言。地球温暖化対策が世界的な課題となる中、発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない原発の推進姿勢を改めて明確にした。
大統領選への出馬を表明した極右政党「国民連合(RN)」のルペン氏も、かつては「危険な産業だ」と原発に否定的だったが、近年は「絶対的優先課題」に掲げ、推進派に転じている。
9月30日付のフィガロ紙が報じた世論調査によれば、原発に対し「良いイメージを持っている」と答えたのは51%と、2年前から17ポイント増加し、初めて過半数となった。風力発電では63%と原発を上回るものの、2年前から17ポイント減少した。
フランスは国内の発電量の約70%を原子力発電に依存している。オランド前大統領はこの割合を25年までに50%に削減すると決定したが、マクロン氏は18年、再生可能エネルギーへの転換が進んでいないことを理由に、達成目標を35年に先延ばしした。
オランド氏の決定は11年の東京電力福島第1原発事故を受けたものだが、10年がたった今、事故の記憶は薄れている。一方で電気・ガス料金の値上げは国民の生活に直結することから、暖房需要が高まる秋以降も、安定的に電力を供給する原発への評価は高まるとみられる。
仏大統領選は来年4月10日に第1回投票、同24日に上位2人による決選投票が行われる。
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