自民党開票センターで中継のインタビューに答える岸田文雄首相=東京都千代田区の同党本部で2021年10月31日午後10時6分、竹内幹撮影
自民党開票センターで中継のインタビューに答える岸田文雄首相=東京都千代田区の同党本部で2021年10月31日午後10時6分、竹内幹撮影

 31日投開票の衆院選は、自民が単独過半数を維持する一方、与野党ともに閣僚経験者らが敗れる波乱が相次いだ。新型コロナウイルス対策などの課題が山積する中、衆院解散から投開票までわずか17日間となった短期決戦。政権継続は認められたものの、岸田文雄首相にとっては党の要である甘利明幹事長が小選挙区で敗れる厳しい結果となった。識者はどう見たか。

「アベノミクスとどう違うのか」

 経済評論家・荻原博子氏の話 分配のあり方が大きな争点だったが、岸田文雄首相が掲げる政策には当初から具体性がなく、最後まで曖昧なままだった。分配についての説明は選挙戦が進むにつれて後退し、「成長なくして分配なし」というアベノミクスとどう違うのか、分からない内容に収まってしまった。野党との論戦は最後までかみ合わなかった印象だ。コロナ禍で格差は広がり、アベノマスクのような税金の無駄遣いが国民に不信感を生んでいる。選挙後は、生活が少しでも良くなる実感が持てるような分配政策を、「具体的に」示してほしい。

「岸田カラー出すことは難しい」

 ジャーナリスト・鈴木哲夫さんの話 岸田文雄首相にとって、自民で単独過半数を維持した今回の結果は、小選挙区で僅差で勝利したところも多く、首の皮一枚つながったと言える。ただ、安倍晋三元首相や麻生太郎副総裁、総裁選で善戦した高市早苗政調会長、公明党の発言力がさらに増すことになる。岸田首相はこれまでと同じくがんじがらめとなり、分配政策でも岸田カラーを打ち出すことは難しいだろう。来年の参院選まで1年を切る中、岸田政権はさらに迷走し、支持率が下がっていくこともあり得る。