総選挙の結果が判明した。自公連立政権が「絶対安定多数」を維持し、共産党などと候補者を一本化した立憲民主党が敗北した。甘利氏の小選挙区落選の要因は、国民に背を向けた疑惑に関する説明だろう。幹事長辞任の意向を示しているようだ。当然だろう。甘利氏の辞任は岸田首相の任命責任に直結する。ただでさえ3Aに引っ張られている印象の強い岸田氏。来年の夏には参院選挙が控えている。新しい資本主義の具体像は依然として見えてこない。政策の推進に力強さがない。加えて麻生氏を副総裁、甘利氏を党の幹事長に起用した3A依存体質。甘利氏の辞任に伴う後任指名は、こうした現実を改めて浮き彫りにするだろう。それ以上に悲惨なのは立憲民主党とメディアだ。とりわけNHKをはじめとしたテレビメディアは惨敗だった。昨日寝るまでは自民党の獲得議席はせいぜい過半数を多少超える程度だろうと思っていた。朝起きたら「絶対過安定多数」に届いていた。自民党はNHKの最高獲得予想すら上回った。テレビは見ないほうがいい。

立憲民主党の敗北ははっきりしている。天皇制を否定し、日米安保破棄を党是とする共産党と組んだことだ。北朝鮮の核開発が脅威をもたらし、中国が台湾に軍事侵攻するのではとの懸念が強まっている中で立民は、政権選択選挙で共産党と組んだ。このリスクを枝野代表は見誤ったのではないか。共産党を拒否した国民民主党が議席を伸ばしかことが端的にそれを象徴している。そのことは党の副代表である辻元清美氏の落選に通じるし、維新の大躍進にも通じている。維新躍進の原動力は吉村大阪府知事ではないか。コロナの感染拡大初期に吉村知事は先手、先手と矢継ぎ早に対策を打ち出した。コロナと戦う同知事の姿が党のイメージアップにつながった。加えて、バラマキ合戦一辺倒だった各党のコロナ対策論争に、積極的に加わらなかったことも有権者に評価された気がする。選挙戦を通じての政策論争は極めて不毛だった。新しいことはなにもなく、各党とも弱者に寄り添うふりをしながらバラマキ論争を続けた。鍋の底を温めるための具体的な政策論争はなかった。

メディアはどうしてこれほど間違えるのか。選挙データが出揃ったところで改めてさまざまな角度から分析する必要がある。直感的に思ったのは2015年の英国のEU離脱の是非を問うた国民投票、翌16年の米大統領選挙、あの時の状況に似ている気がする。国民投票でメディアは、「離脱反対派が多数を占める」と思い込んでいた。大統領選では「トランプ氏が勝つはずがない」と信じていた。どのメディアも有権者がなにを求めているか探ろうとはしなかった。今回の総選挙、選挙の争点がボヤけていた分、野党統一候補の動静に関心が集まった。おそらくメディアは「これで選挙は混戦になる」と根拠もなく思い込んだのだろう。だが有権者は統一候補の背後にある危険性に気づいていた。メディアは今回も有権者がなにを求めているか、考えようとはしなかった。個人的には「メディアはまた同じ間違いを犯した」、そんな気がするのだが……。