フェイスブックが先週、メタバース(ネット上の仮想世界)を前面に押し出した新社名を発表した際、そのコンセプトについては非現実的もしくは完全にディストピア的だという批判の声が出た。
米フェイスブック、社名を「メタ」に変更-イメージ刷新図る (2)
実際、仮想現実(VR)端末を持っている消費者はまだ限られ、メタバースという概念にはプライバシー懸念のほか、ある種の薄気味悪さも伴う。しかし、フェイスブック改めメタ・プラットフォームズのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)以外にも、メタバースに賭けているハイテク業界のキープレーヤーがいる。ビデオゲーム用チップメーカー最大手のエヌビディアだ。
ビデオゲームのブームに乗って急成長し、時価総額でインテルを抜いた同社は今、インターネットを3次元(3D)の世界に作り変えようとしている。同社幹部のリチャード・ケリス氏は「自分がメタバースにいることになるとは思わないかもしれないが、今後5年以内に誰もが何らかの形でメタバースにいると約束する」と述べた。
もちろん、エヌビディアにはメタバースの進展に強い関心を寄せる理由がある。同社は祖業であるゲーム機用グラフィックカード以外の分野での成長機会を模索してきた。その大きな1つが人工知能(AI)だ。さらに同社は仮想空間を作り出すソフトウエアプラットフォーム「オムニバース」も手掛けている。
また、ソフトバンクグループから半導体設計会社の英アームを買収しようとしているが、それが実現すれば、スマートフォンを含むさまざまな機器に使用されている半導体の設計を手に入れることができる。その中には、新たな世界のインフラに欠かせないセンサーやカメラも含まれる。
エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは長年、AIと仮想空間の伝道師の役割を担ってきた。同社はこれら2つがハイテク業界の地図を塗り替える可能性があるとみている。
推進派が目指すのは、メタバースをエンターテインメントやゲームだけでなく日常生活にも浸透させることだ。ケリス氏は、メタバースによって仕事の進め方の多くが変わるだけでなく、デザインやショッピングの大部分がバーチャルな世界に移行し、遠隔医療も実際の医師による診察に近いものになる未来を描いている。
かつてアップルやルーカスフィルムにも在籍していた同氏は「50年前、インターネットをベースにした事業が世界のトップ企業になると誰が考えただろうか。向こう数年でトップ企業はコネクテッド・ワールドをベースにしたものになるだろう」と述べた。
原題:Nvidia Joins Zuckerberg in Betting Metaverse Is Next Big Thing(抜粋)