岸田文雄首相は4日、就任から1カ月を迎えた。戦後最短となる就任10日で衆院解散に踏み切ったため、本格的な政権運営はこれからだ。新型コロナウイルス対策をはじめ内政・外交の課題が山積する中、衆院選で公約した国民への給付金支給の具体化が政権の行方を占う最初の関門になりそうだ。

 首相は4日、首相官邸で記者団に、過去1カ月あまりを「自民党総裁選、組閣、解散・総選挙をスピード感を持って進めてきた」と振り返った。その上で、「国民の信託を頂いた今、そのスピード感を政策実行に向けていきたい」と語った。

 最初の関門になるのが11月中旬にまとめる大型経済対策の柱である給付金の扱いだ。連立を組む公明党と意見が対立する可能性があるからだ。

 自民党内では財政規律派を中心に「ばらまき」に否定的な声が根強い。衆院選公約を「非正規雇用者、女性、子育て世帯、学生などへの経済的支援」と抑制的にとどめたのもこのためだ。これに対し、公明党は0~18歳に一律10万円相当の「未来応援給付」を約束。1人一律3万円相当のマイナンバーポイント付与もぶち上げた。

 給付金は首相にとって因縁の政策課題だ。政府は昨年4月、減収世帯への30万円給付をいったん閣議決定。政調会長だった首相は自身の成果と誇ったが、公明党から再考を迫られた安倍晋三首相(当時)が国民1人10万円の給付に突如切り替え、首相は顔に泥を塗られた経緯がある。

 給付金を衆院選の看板公約と位置付けた公明党は「今回も譲れない」(関係者)と息巻く。竹内譲政調会長はツイッターに「未来応援給付は現金給付で実施する。100%実現する」と記し、一歩も引かない構えだ。

 首相を待ち構えるのは経済対策だけではない。コロナ対応の全体像の提示は今月前半が期限。首相は「確実に入院できる体制」を月末までに整えることを明言している。3回目のワクチン接種は12月に開始する方針で、これまで公言してきた「経口治療薬の年内実用化」にも決着をつける必要がある。

 得意と自負する外交分野でも、敵基地攻撃能力の扱いが焦点となる国家安全保障戦略改定など、調整が難しい課題が控える。首相は来夏の参院選に向け、半年あまりで実績をできる限り積み上げたい考えだが、政権運営の手腕に疑問符が付けば、参院選で厳しい評価を受ける可能性もある。

 ◇予想される政治日程
【2021年11月】
 10日  特別国会召集。第2次岸田内閣発足
  前半  新型コロナウイルス対策の全体像提示
  中旬  生活困窮者への給付金を含む大型経済対策策定
 月内?  立憲民主党代表選
【12月】
 上中旬  経済対策の裏付けとなる21年度補正予算案成立
  下旬  22年度予算案を決定
 年内?  首相訪米
【22年】
  1月  通常国会召集
  3月? 22年度予算案成立
  夏   参院選。