世界最大の年金基金、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2021年度第2四半期(7-9月)の運用収益はプラス0.98%の1兆8763億円と、6四半期連続のプラスとなった。GPIFが5日公表した。
東証株価指数(TOPIX)が9月に約31年ぶりの高値を更新する中、国内株式の収益率が2四半期ぶりにプラスとなった。国内債券は2四半期連続プラス。一方、外国株式は6四半期ぶり、外国債券は11四半期ぶりにマイナスに転じた。
GPIFの宮園雅敬理事長は、「新型コロナウイルスのワクチン接種による経済活動の正常化や今後の経済政策に対する期待感などから、国内株式市場は大きく上昇した」とコメントした。
収益率 | 7-9月期(カッコ内、ベンチマーク) |
---|---|
運用資産全体 | 0.98% |
国内債券 | 0.11%(0.06%) |
国内株式 | 5.35%(5.32%) |
外国債券 | -0.85%(-0.89%) |
外国株式 | -0.77%(-0.79%) |
国内株式が寄与
出所:GPIF(単位:兆円)
SMBC日興証券の末沢豪謙金融財政アナリストは、「全体のパフォーマンスは8月末ごろからの日本株の急反発に助けられた側面が強い」と指摘。収益率がマイナスに転じた外国債券については、対ユーロでの円高によるものと分析した。
9月末時点の運用資産額は194兆1197億円と、6月末の191兆6190億円を上回り過去最高となった。市場運用を開始した01年度からの累積の収益率(年率)はプラス3.70%、収益額は102兆1946億円。
資産構成割合は、国内株式が3四半期ぶりに25%を上回ったほか、国内債券も上昇した。一方、外国資産は株式、債券ともに低下した。国内外を合わせた構成割合は株式が49.04%と6月末の49.89%から低下、債券は50.96%で50.11%から上昇した。
株や債券といった伝統的資産以外のオルタナティブ(代替)資産の全体に占める割合は0.82%(6月末0.76%)に増えた。
資産構成割合 | 21年9月末 | 6月末 | 3月末 | 20年12月末 |
---|---|---|---|---|
国内債券 | 26.79% | 25.39% | 25.92% | 23.64% |
国内株式 | 25.03% | 24.49% | 24.58% | 25.28% |
外国債券(為替ヘッジなし) | 24.17% | 24.72% | 24.61% | 25.71% |
外国株式 | 24.01% | 25.41% | 24.89% | 25.36% |
オルタナティブ(代替)資産 | 0.82% | 0.76% | 0.70% | 0.67% |
注:為替ヘッジ付き外国債券及び円建て短期資産は国内債券に区分。外貨建て短期資産は外国債券に区分
GPIFは長期の実質的な運用利回り目標として賃金上昇率を1.7%上回る水準に設定している。20年度からは国内外の債券と株式に25%ずつ振り向ける基本ポートフォリオに基づき運用。金利低下に伴い国内債券の割合を減らし、外国債券の比率を引き上げた。
TOPIXは7-9月に4.5%上昇。ワクチン接種の進展に伴い新型コロナ感染者が減少に向かうなどで投資家心理が改善したほか、菅義偉前首相の退陣表明以後は次期政権への期待が株価を押し上げた。一方、先進国と新興国の株式で構成するMSCIオールカントリーワールド指数は同期間に1.5%下落した。
ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは、今後はインフレが株式のリスクになると指摘。7-9月は米国の経済成長率が大きく減速した上、中国でも製造業の減速モードが鮮明で、「スタグフレーションとまではいかなくても、インフレによる景気減速で株価が急落するリスクはある」との見方を示した。
GPIFの運用収益率
出所:GPIF
関連記事 |
---|
・GPIFの運用収益率プラス2.68%、外国資産けん引-4~6月期 ・GPIF、中国国債を当面投資対象にしない方針-リスク考慮 ・GPIFのESG、7指数のうち6指数で超過収益得られず-20年度 |