イギリスで開かれている国連の気候変動対策の会議「COP26」は12日、最終日を迎えましたが、途上国への資金支援などについて意見が分かれて交渉は難航し、会期が延長されました。
議長国イギリスは、現地時間の13日の朝、3度目となる議長案を示すとしていて、その日のうちの合意を目指して交渉が続けられる予定です。
「COP26」は最終日の12日、議長国のイギリスが成果文書の取りまとめに向けて2度目となる議長案を示しました。
議長案では、世界の気温の上昇を1.5度に抑える努力を追求し、各国の2030年に向けた排出削減の目標について、来年の末までに必要に応じて検証し、さらに強化することを要請しています。
また、発展途上国への気候変動対策の支援として、先進国が2020年までに約束している年間1000億ドルの資金拠出については、2025年までの間に早急に達成することを強く要請しています。
そして石炭については、排出削減対策が取られていない石炭火力発電の段階的な廃止を加速させることが含まれています。
これについて、アメリカやEU=ヨーロッパ連合の代表などからは、前向きに受け止める声も上がった一方、発展途上国からは資金支援に関してさらに拡充を求めるなど意見が分かれました。
また「パリ協定」の実施に向けたルールの中で、いまだ合意に至っていない、温室効果ガスの排出削減量の取り引きに関する部分についても一部の国が反発するなど、交渉は難航しました。
その結果、12日には合意には至らず、会期は延長されました。
議長国イギリスは、13日の朝に3度目となる議長案を示し、交渉を続けてその日のうちの成果文書の採択を目指すと発表していて、各国が立場の違いを乗り越えて合意できるのか、交渉は最終局面を迎えることになります。
各国が議長案に対して意見を表明
12日に示された2度目の議長案に対して交渉に参加している国はそれぞれの立場から意見を表明しました。
EUを代表して発言したヨーロッパ委員会のティメルマンス副委員長は、自身に1歳の孫がいることを紹介し「もし私たちが失敗すれば、彼は他の人たちと水や食料のために争わなくてはいけないだろう。1.5度に抑えることは私たちの子どもや孫が暮らすことのできない未来を避けることにつながる」と述べました。
そのうえで「主要な排出国が排出量を削減し、1.5度に抑えなければならない。また、先進国は資金面で十分な成果を挙げていない」と述べ、合意のために協力する姿勢を示しました。
西アフリカのギニアは「途上国グループを代表して、気候変動によって受けた被害や損失に対応するための資金について、私たちが要望していた内容が盛り込まれていないことに深く失望している」と述べました。
そのうえで「この提案は、地球上の人の多くを占める途上国の総意として打ち出されているものだ。われわれの要望が反映されないかぎり、前には進めない」と主張しました。
アメリカのケリー特使は「パリ協定に基づくことがすべてにおいて優先される。排出削減に関する内容については弱めることも、強めることもできない」と述べ、世界の気温の上昇を1.5度に抑える努力を追求するなどとした内容に賛同する考えを示しました。
COP26 大きな焦点は
COP26の大きな焦点は、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5度に抑えることを、参加国が一致して目指せるかという点です。
成果文書の取りまとめに向けて12日に示された新たな議長案では、世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える努力を追求しそのためにこの10年間での行動を加速する必要があるとしています。
そのうえで、各国の2030年に向けた排出削減の目標については2022年の末までに必要に応じて検証し、さらに強化することを要請しています。
交渉関係者によりますと、こうした内容について、温室効果ガスの排出量が多い一部の国などが慎重な姿勢を示しているということです。
COP26の直前にイタリアで開かれたG20サミット=主要20か国の首脳会議で採択された首脳宣言には、世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えることを実現可能な範囲にとどめるために、すべての国に実効性のある行動を求めるという表現が盛り込まれました。
COP26の議長国イギリスとしては、今回の会合ではG20の首脳宣言より踏み込んだ内容で合意したいというねらいがあると見られ、成果文書にどのような表現で盛り込まれるのかが焦点となっています。