政府が19日に決定する予定の経済対策で、財政支出が過去最大の55・7兆円に達する見通しになった。民間が使うお金も含めた事業規模は78・9兆円となる見込みだ。18歳以下の子どもや困窮世帯への給付金など、国民に直接お金を配る事業が多く、金額が膨らむことになった。
財政支出は、国と地方の支出に、国からの貸付金である財政投融資を加えたもの。これまでは、コロナ禍初期の2020年4月の対策の48・4兆円が最大だった。このうち国費は43・7兆円とする方向で、与党内から要望が多かった「30兆円規模」を大きく上回る。
対策は4本柱で、それぞれの財政支出は、医療提供体制の拡充など新型コロナ対策に22・1兆円▽ワクチン開発の支援など次の危機への備えに9・2兆円▽個人向けの給付金や半導体産業への支援など「新しい資本主義」関連に19・8兆円▽防災などの公共事業に4・6兆円とする方向だ。
対策に必要なお金のうち31・9兆円を、今月下旬にも閣議決定する補正予算案に盛り込む。一部の費用は来年度当初予算案にも計上する。二つの予算案を一体のものとして編成し、切れ目ない執行をめざす「16カ月予算」とする構えだ。政府はまず、補正予算案を来月開会予定の臨時国会に出し、年内の成立をめざす。
財源は20年度の剰余金4・5兆円などのほか、足りない分は国の借金である国債を追加で発行する。21年度は、当初予算段階でも43・6兆円の国債発行を予定しており、21年度末に国債残高は1千兆円を超える可能性がある。ワクチン接種が進み、感染拡大が落ち着いている現状で、巨額のお金を幅広く配る施策については、政策の目的や経済効果に疑問の声が出ている。(榊原謙、森岡航平)