[東京 29日 ロイター] – 日産自動車は29日、電動車対応で2026年度までに2兆円を投資すると発表した。従来電池より高性能で航続距離を伸ばせる全固体電池を搭載した電気自動車(EV)を28年度に販売し、30年度までにEV15車種を含む電動車23車種を投入する。
世界的な脱炭素の流れを受け、ハイブリッド車(HV)を含めた電動車を強化する。
電動車比率は高級車ブランド「インフィニティ」も含めた車種数で現在の10%強から50%以上に増やす。米中で販売するインフィニティをEV中心とし、EV専業の米テスラTSLA.Oなど世界の競合に対抗する。
内田誠社長兼最高経営責任者は会見で、事業構造改革の進展により23年度目標の営業利益率5%は「確実に達成できる」とし、電動化投資を進めつつ今後も「5%以上は維持する」と強調した。連合を組む仏ルノーと三菱自動車との取り組みでは別に3兆円の投資も計画しており、来年1月に詳細を公表する。
26年度までにEVとHVで計20車種を投入し、「このうち9車種がEVになる」とアシュワニ・グプタ最高執行責任者は話した。同年度までの電動車販売比率を欧州で75%以上、日本で55%以上、中国で40%以上に引き上げ、米国では30年度までにEV販売比率を40%以上に向上させる。
全固体電池の量産では、24年度までに横浜工場で試作ラインを導入、26年度までに1400億円を投じる。28年度には電池のコストを1キロワット時(kwh)当たり75ドルまで下げ、その後はガソリン車と同水準にすべく65ドルへ下げる。生産能力は提携企業と協力して26年度までに52ギガワット時(GWh)、30年度までに130GWhへ増やす。
グプタ氏は、全固体電池は「どちらかというと大型車向け」と述べ、ピックアップトラックなどへの搭載を視野に入れる。充電時間も3分の1に短縮。現行の電池はコバルトなどの希少金属を減らし、28年度までに1kWh当たりコストを65%削減する。ルノーと三菱自とも電池を共通化してコストを下げる。
EV普及に不可欠な充電器も世界で100万基整備し、26年度までに最大200億円を投じる。電池再利用のための施設も22年度に欧州、25年度に米国に新設する。
今後、先進技術領域で新たに技術者3000人以上を採用。26年度までに運転支援技術の搭載車をインフィニティを含め250万台以上に増やし、交通事故軽減に向け30年度までに、ほぼ全ての新型車に高性能な次世代ライダー技術の搭載を目指す。
各社も電動化を急いでおり、トヨタ自動車は電池の開発や設備に1.5兆円を投資、全固体電池も20年代前半にHVへの採用で量産を予定している。30年にHVを含む電動車で800万台、うちEVと燃料電池車(FCV)で200万台の販売を計画する。独フォルクスワーゲンは30年に5割をEVとし、25年までに350億ユーロ(約4.5兆円)を投資。ホンダは40年に全てをEVとFCVにし、今後6年で約5兆円の研究開発費を投じる。
証券ジャパン調査情報部の大谷正之部長は、EVの先駆者である日産のわりには「発表内容が積極性に欠ける」と述べ、全固体電池の量産時期の28年度も「他社に比べ遅め」との見方を示した。
(白木真紀 ティム・ケリー 編集:山川薫 田中志保)