女子テニスツアーを統括するWTA(女子テニス協会・スティーブ・サイモンCEO)が2日、「香港を含めた中国で開催予定の大会をただちに凍結する」と発表した。中国のプロテニスプレイヤーある彭帥さん(35)に対する性的暴力の究明が不十分であるとの理由によるもの。彭帥問題はすでに世界中で大問題になっている。TWAはこれまでも中国当局に厳しい対応を求めてきたが、真相は依然として明らかになっていない。IOCのバッハ会長は彭帥さんとオンライン対話した写真を公表した。存在は確認されたものの、自由が保障されているかどうかは未確認のままだ。こうした中でTWAは「彭帥が自由に発言できず抑え込まれている場所で競うことを選手たちに頼むことはできない。現状を考えれば、2022年に中国で大会を開いた場合、選手やスタッフが直面するリスクについても大きな懸念を抱いている」としている。

彭帥問題の本質は中国高官による性的暴力に対する中国政府の見解だ。問題は彭帥さん個人にとどまらない。権力を盾に人権を抑圧する中国高官に対する怒り、これが この問題の本質だろう。世論は中国政府の対応を糺そうとしている。問題が発覚したのは11月2日。彭帥さんがSNSで元副首相の張高麗氏から「性的関係を強要され、その後不倫関係が続いた」(朝日新聞)と投稿した。この投稿は30分後に削除されている。4日付でBBCがあらましを報道している。何が起こったのか、以下はBBCからの引用。「あの日の午後、私は同意していなかった。私は泣き続けました」、「あなたは私を自宅に連れ込んで、関係をもつよう強制しました」、「証拠はありませんし、証拠を残すことは不可能でした。(中略)あなたはいつも、私がテープレコーダーのような物を持ち込み、証拠を残すなどしないか恐れていました。(中略)音声記録も、映像記録もありません。ゆがめられた、でもまさに現実の経験があるだけです」

これは明らかに性的暴力である。TWAは自由が保障された場所で彭帥さんが発言することを求めている。中国政府はいまだにこの要求を拒否している。それ以上に「スポーツの政治化を許すべきでない」と反論する始末。IOCは21日、バッハ会長が彭帥さんとオンラインで対話した事実だけを公表、有力スポンサーである中国政府に配慮する姿勢を見せた。一方TWAは、言葉は悪いが最大のカネズルである中国開催を全部中止して選手の身の安全を守ろうとしている。どっちがアスリートファーストか、誰が見ても答えは明らかだ。来年2月に北京五輪の開催が迫っている。性的暴力をスポーツの政治化と歪曲して問題が解決するわけがない。中国とIOCにオリンピックを開催する資格が本当にあるのか、時間の経過とともに彭帥問題は重大化し、深刻化している。このままこの問題が雲散霧消することはないだろう。