日本銀行の黒田東彦総裁は17日の金融政策決定会合の記者会見で、国債や上場投資信託(ETF)の購入が減少しているものの、現在の大規模な金融緩和政策の縮小や正常化プロセスに入っていることはないとの認識を示した。
長短金利操作付き量的質的金融緩和の下で「適切なイールドカーブ(利回り曲線)が実現されている」と説明した。緩和縮小や正常化プロセスに入ったという状況では「全くありません」と話した。今後もリスクプレミアム上昇局面では大規模にETFを購入するという。
国内企業物価が約40年ぶりの伸び率となるなど原材料価格は上昇を続けているが、日本の物価が「2%に及ぶとか、超えることはまずない。欧米のように金融政策が正常化に向けて動き出すことにはならない」との見解を表明。欧米と「経済や物価の差異で金融政策の方向性が違うのは当然」と話し、海外中銀の決定が「直ちに日銀の政策に影響及ぼすことはない」と強調した。
一方、「物価見通しや予想物価上昇率が従来よりも上昇してきているのは事実だ」とし、下振れが続いてきた物価の先行きリスクも「アップサイドのリスクの見方が多くなるのか、今後の動向を見て議論していく」と語った。
- オミクロン株で不確実性高く、なるべく早く延長を打ち出すことが安心感につながる-コロナ対応プログラム
- コマーシャルペーパー(CP)の買い入れ正常化に半年程度、社債は5年程度-上限20兆円の増額措置終了
- 円安はこれまでのところ日本経済にプラスに作用
- 賃金と物価が上昇する中で、2%物価目標達成が望ましい
- 消費者物価、23年度にかけ徐々に高まっても1%程度の伸びにとどまる
- 即日の国債買現先オペ、レポ金利の急上昇望ましくないため
- 短期金利が上がり過ぎれば、今後も必要に応じて措置取る
日銀は決定会合で、来年3月末が期限となる新型コロナウイルス感染症対応の資金繰り支援策のうち、中小企業向けについて半年間の延長を決めた。大企業向けが中心のCPと社債買い入れの上限20兆円の増額措置は、期限通り終了する。現行の長短金利操作付き量的・質的金融緩和は維持した。
- 新型コロナ対応金融支援特別オペ
- 中小企業向けのプロパー融資分は現行のまま半年延長
- 中小企業向け制度融資分は付利を0%に引き下げて半年延長
- マクロ加算残高への算入は利用残高相当額とした上で、バックファイナンス措置として期限を半年間延長
- 大企業向けや住宅ローンを中心とする民間債務担保分は期限通り終了
- コロナ対応オペの見直し、全員一致で決定
- CP・社債の買い入れ
- 4月以降は買い入れ残高を感染拡大前の水準(CP2兆円、社債3兆円)へ徐々に引き下げ