[北京 3日 ロイター] – 中国政府は2月の北京冬季五輪で、選手や関係者を外部と接触させない「バブル方式」を徹底する方針だ。しかし、感染力の強い新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」が出現し、こうした取り組みは厳しい試練にさらされそうだ。 

中国では感染経路の徹底的な追跡、標的を絞った厳しいロックダウン(都市封鎖)、海外からの渡航者の大幅な落ち込みを伴う旅行制限など「感染ゼロ」政策が奏功。新型コロナは2年前の武漢での初の感染確認以来、おおむね抑え込みに成功してきた。オミクロン株の感染確認数も一握りにとどまっている。

だが、2月4日に開幕する北京五輪では海外から2000人余りの選手が入国するほか、2万5000人に上る大会関係者は大半が外国からの入国となる。大会組織委は選手や関係者のうち、どの程度の人数が「バブル」内に入るのか公表していない。

大会組織委の広報担当者は昨年12月30日、「冬季五輪・パラリンピックを安全かつスケジュール通りに行うことは可能だ」と述べ、感染防止策に自信を示した。

大会が開かれる北京と河北省張家口市の規制は、昨夏の東京五輪よりもはるかに厳しい。

計画の中核を構成するのが、選手や大会関係者を国内居住者と物理的に隔てる徹底的なバブル方式。海外からの渡航者は専用機を使って直接バブル内に入り、直接出て行く。

デルタ株の感染者数が世界的に急増していたタイミングで開かれた東京五輪でも、厳しいバブル方式が導入された。ただ、報道関係者やボランティアなど国内居住者はバブルとの出入りが自由で、海外からの入国者の一部も14日間の隔離後で複数回の検査で陰性の結果が出ればバブルを出ることができた。

ところが、これまでの変異株よりもはるかに感染力が強いとみられるオミクロン株の発生で、世界の新型コロナ感染者数は記録的な水準に上昇し、スポーツ大会のスケジュールは混乱している。

北米プロアイスホッケーリーグ(NHL)は、リーグ戦の中止が相次いだことを理由に北京五輪への選手派遣を取りやめると発表。カナダ五輪委の委員長は12月31日、北京五輪が予定通り開催できるか懸念を強めていると述べた。

ロンドン大学の感染症専門家、アイリーン・ピーターソン教授はオミクロン株について「私はときどき短距離走者と呼んでいる。とにかく感染力が強く、感染速度が速い」と話した。

昨年秋に英国・グラスゴーで開かれた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)によって、大量に検査を実施すれば感染を最小限に抑えて大規模な国際的イベントを開催することができることが分かった。だが「当時流行していたのはデルタ株だった。オミクロン株のような変異株は初めてだ」という。

<テスト大会は結果良好>

大会組織委によると、昨年初めに海外から約2000人が参加して行ったテスト大会は、選手の中で感染者数がわずかに出ただけで、政府のコロナ感染防止策の有効性が示された。

米シンクタンク、外交問題評議会のヤンゾン・ファン上級研究員は「今回のシステムは、国民が新型コロナウイルスに接触する機会を最小限に抑えるように開発されている」と言う。

ただ、ファン氏は、オミクロン株の出現でリスクは高まっていると指摘する。中国ではほとんどの国民が新型コロナに感染しておらず、流行時に感染しやすいほか、中国製ワクチンの感染防止効果が低いことも理由だという。

中国では約85%の国民がワクチンを接種済みで、国内のボランティアなどバブル内に入る関係者約2万人も接種を終えている。しかし、国内接種の大半を占める中国医薬集団(シノファーム)と科興控股生物化学(シノバック)の国産ワクチンは臨床試験における発症予防効果が50-83.5%と、ファイザーやモデルナなど外国製の90%以上に比べて劣っている。

<困難なバブル維持>

東京五輪では海外からの観客の受け入れが中止されたが、北京五輪でも同様の対応が採られ、国内の観客の受け入れも制限されそうだ。

大会参加者は専用機で北京入りする前に、複数回の検査で陰性を証明することが義務付けられる。ワクチンを接種していない参加者は到着後、3週間の隔離が必要となる。また、全員が毎日検査を行う。

しかし、こうした検査を行っても、コロナが潜伏期間中であれば必ずしも感染を捕捉できない。組織委も海外から大量に人が押し寄せることを考えれば、ある程度の感染発生が予想されると認めている。

ロンドン大のピーターソン氏は「検査で感染者を除くなら、水際での実施が不可欠だ」とした。

オタゴ大のマイケル・ベーカー教授によると、さまざまな国から人が訪れ、選手やスタッフが集まれば対応が難しく、感染力が強く、潜伏期間が短いというデルタ株やオミクロン株の性質が、それに拍車を掛けると指摘。「大会期間中に感染拡大を抑え込むのは難しく、大会参加者の間で感染が広がり、さらに地域へと拡散するリスクがある」と警鐘を鳴らした。

(Gabriel Crossley記者、Martin Quin Pollard記者)