【マニラ時事】フィリピンで5月に大統領選が行われる。世論調査では、独裁政治を20年以上続けた故マルコス元大統領の長男で元上院議員のマルコス氏が独走状態にある。現職のドゥテルテ大統領は権力維持を狙い、側近を担いだりマルコス氏を「口撃」したりしたが実を結ばず、影響力の低下が指摘されている。
マルコス氏は先月行われた3件の世論調査でいずれも過半数の支持を集めた。政治コンサルタント会社パブリカス・アジアの調査では51.9%を獲得。前回の副大統領選を争ったロブレド副大統領(20.2%)をはじめ、マニラ市長のモレノ氏(7.9%)や、世界6階級を制した元ボクサーで上院議員のパッキャオ氏(2.3%)ら主要候補を大きく引き離した。
最有力候補と目されたドゥテルテ氏の長女サラ氏が大統領選の出馬を見送った恩恵を大きく受けた格好。サラ氏は副大統領選に立候補してマルコス氏と組んだが、世論調査でやはり50%超の支持を得ており、このペアが圧勝する勢いだ。
一方、「後継にサラ氏」の思惑が外れたドゥテルテ氏は、代わりに側近のゴー上院議員を大統領選に担いだ。ゴー氏は常にドゥテルテ氏に付き添い、「操り人形」と言われる人物。当選すればドゥテルテ氏が実権を保つことも可能になる。
ドゥテルテ氏はゴー氏の支援にとどまらず、「政界引退」宣言をほごにして上院選へ立候補した。さらに、マルコス氏を連日「弱い候補者だ」「甘やかされて育ったから」「父親と違い、取りえは名前だけ」と口撃した。だが、マルコス氏の人気は落ちず、ゴー氏の支持率は低迷した。
ゴー氏は先月14日に立候補を取り下げ、ドゥテルテ氏も上院選から撤退した。「口撃が奏功せず、影響力の低下を思い知らされた。大統領は死に体化している」。アテネオ・デ・マニラ大学のアバオ教授(政治学)はそう分析した。
ただ、ドゥテルテ氏の人気は今も高い。先月上旬の世論調査で支持率は72%となり、9月から8ポイント上昇。選挙での言動がなお注目される。