政府は10日から沖縄、山口、広島の3県に「まんえん防止等重点措置」を発令した。オミクロン株の急激な感染拡大に対応する措置だが、この3県に共通するのは米軍基地だ。沖縄県の玉城知事は「感染拡大の起因の一つが米軍基地」と明言している。同県でオミクロン株の感染が初めて確認されたのが12月17日。基地で働く日本人従業員の感染が発覚した。玉城知事はこれを受け21日に在沖縄米軍、23日には米大使館に出向いて感染防止措置を要請している。当初から重症化リスクは低いものの、感染力が強くあっという間に感染が拡大すると指摘されていた。玉城知事は自治体首長として極めて迅速な対応をとった。岸田首相の対応も当初は早かった。南アの発表後一週間ほどで徹底的な水際際対策に踏み切った。2020年春、中国・武漢での感染拡大の対応で後手を踏んだ安倍元首相の教訓を生かしている。国も自治体も対応力が向上した。少なくともそんな気がしていた。

そんな期待感を沖縄の感染拡大が粉砕した。水も漏らさぬ入国規制は沖縄や山口、広島の在日米軍には適用されていなかった。一般の入国者をどんなに厳しく規制しても、米軍関係者の入国には何の規制もない。基地の外に出ることも自由。米軍関係者を通してオミクロン株が基地の内外に拡散するリスクを政府は黙認したのである。メディアもこうした状況をその都度丹念に報道している。「米軍基地が原因」との玉城知事の指摘に対し、松野官房長官は「コメントを控える」(10日付、東京新聞Web版)とそっけない。山極コロナ担当大臣に至っては国会答弁で「因果関係だけを言っても、感染拡大防止に繋がらない」(同)と米軍基地説を暗に否定する始末。どんなに厳しい水際対策を打ち出しても、米軍という抜け穴を無視すれば対策全体が水泡に期す。因果関係が不明でも、それを追求する姿勢がなければ対策は成り立たない。

日米地位協定は検疫など国内法が定める規定は米軍には適用されないと定めている。いわゆる不平等協定である。米軍基地からの「染み出し」(朝日新聞)を阻止するためにはこの協定の見直しが必要になる。何かにつけ慎重に対応する岸田首相だが、この協定の見直しについては「やらない」と毅然とした態度で明確に否定する。これは岸田首相だけではない。安倍・菅政権も、いやもっと前の自民党政権も同じだ。野党に政権が変わっても事情は変わらないだろう。民主党政権時代に鳩山首相は、普天間基地の移転先を「少なくても県外」と発言して虎の尾を踏んだ。問題の根っ子は同じだ。中国が台頭し、北朝鮮が無謀なミサイル開発を進める中で、抑止力としての核の傘のもとで米国に盲従する以外に日本の安全を保証する手がない。ことほどさようなのだ。「盲従以外に同盟関係は持できない」、日本中がそう思い込んでいる。その発想が日本をダメにしているのではないか。対等への道は果てしなく遠い。