新たな変異ウイルス、オミクロン株によって新型コロナウイルスの感染拡大のスピードはこれまでより格段に速くなっています。
一方、オミクロン株は重症化しにくいとも言われ、感染しても大丈夫なのではないかという声も出てきています。
しかし高齢者などは一定程度重症化するとみられることや、重症化する割合が低くても感染者が大幅に増えると重症者の数が多くなり医療のひっ迫につながるおそれがあるとして、専門家は対策を怠らないよう訴えています。
「重症者増」は高齢者への感染拡大後に
新型コロナウイルスは人と人との接触が多いほど広がりやすく、重症化する割合が低く活動的な若い世代から感染が拡大するため、これまでも当初は軽症の人が多く、重症化する人が増えるのは高齢者や基礎疾患のある人に感染が広がってからでした。
厚生労働省が示しているデータでは、重症化のしやすさは30代を1とした場合
▽10代は0.2倍
▽20代は0.3倍と低い一方で
▽40代は4倍
▽50代は10倍
▽60代は25倍
▽70代は47倍
▽80代は71倍
▽90代は78倍と年齢が上がるにつれて高くなっています。
WHOの報告でもオミクロン株は重症化する割合がデルタ株などと比べて低いとされる一方、WHOは「年齢が上がる、基礎疾患がある、ワクチンを打っていない人ではオミクロン株でも重症化する割合は上がる」としています。
日本国内ではオミクロン株による感染拡大が本格化したのはことしに入ってからで、厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、最も感染が拡大している沖縄県では今月11日までの1週間で感染者のおよそ75%が30代以下で、12日の時点では感染者の95%以上が無症状か軽症と報告されています。
今回の感染拡大でもこれまでと同様、今後、高齢者に感染が広がり重症者が増えることが懸念されています。
「感染者数」増から約2週間遅れで「重症者数」増か
厚生労働省が作成した「診療の手引き」によりますと、これまで新型コロナウイルスに感染した患者は、発症した当初は多くの場合は軽症でも発症からおよそ1週間でおよそ20%は酸素投与が必要になり、およそ5%は人工呼吸器を使った治療が必要になるとされています。
感染から重症化までには多くの場合一定の時間がかかることもあり、去年夏の第5波では1日の感染者数のピークは8月20日の2万5992人でしたが、入院患者数のピークは厚生労働省のまとめで9月1日の2万4081人、重症者数のピークは感染者数のピークから2週間たった9月4日の2223人でした。
今回のオミクロン株による感染拡大でも感染者数の増加から2週間ほど遅れて入院患者数や重症者数が増加するおそれがあり、厚生労働省の専門家会合ではオミクロン株でも慎重に見る必要があると指摘しています。
入院患者数増で医療ひっ迫の可能性
さらに問題となるのが、オミクロン株では感染力がこれまでの変異ウイルスより強いため、重症化する割合が低くても入院に至る患者の数が大きく増えて医療体制がひっ迫するおそれがあることです。
イギリスのデータではオミクロン株で入院に至るリスクはデルタ株に比べて3分の1になっている一方、オミクロン株の感染力は最大でデルタ株の3倍とも報告されています。
イギリスでは新規の感染者数はデルタ株の感染が広がった去年夏以降のピークの3倍以上となる1日20万人を超える日もあり、保健当局によりますと連日2000人以上が新たに入院し、今月11日時点の入院患者数は2万人近くに上るなど医療体制がひっ迫してきています。
また、アメリカでもCDC=疾病対策センターによりますと、感染者数は今月10日、1日あたり140万6500人を超え、入院患者数も14万人余りと過去最多の水準となり医療体制への負荷が高まっています。
国内で最も感染が拡大している沖縄県では感染拡大が始まってから時間が経過し、今月12日の時点で確保病床の使用率は47.1%、重症患者向けの確保病床の使用率も51.4%と医療機関の負担が増加してきています。
専門家「注意必要な状況に変わりない」
専門家は、日本国内でも感染が爆発的に増加すれば重症化する割合が低くても入院が必要な人の数が増え、医療体制がひっ迫する可能性があると警戒しています。
海外の感染症に詳しい東京医科大学の濱田篤郎 特任教授は「今は感染した人は若者が多いが高齢者に広がるとより重症化しやすい可能性がある。重症化リスクが低いといっても注意が必要な状況であることに変わりはない」と話しています。