Gina Chon

[ワシントン 12日 ロイター BREAKINGVIEWS] – インフレによって、米国の消費者が描く明るい未来は色あせてしまうだろう。米労働省が12日発表した昨年12月の消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率は7%と40年ぶりの高い伸びを記録。それが消費者の懐に及ぼす影響は、まだ彼らの経済に対する楽観的な見方を覆すに至っていないが、今後状況が一変してもおかしくない。 

12月CPIは、目をむくような物価上昇が続いた2021年の締めくくりと言えるデータだ。例えば、ガソリン価格は21年を通じて上昇し、12月は50%近くも跳ね上がった。CPIの前年比上昇率自体も11月の6.8%から加速した。

ただ、米国の消費者は今のところ、引き締まった労働市場のおかげで強気を維持している。コンファレンスボードの消費者信頼感指数は12月も上向き、ロイターがまとめたエコノミスト予想を上回った。

そうしたムードが実際の消費拡大を促し、マスターカード・スペンディング・パルスによると、年末商戦の売上高は19年に比べて約11%増加した。

消費者は、サプライチェーン(供給網)混乱絡みに起因したコストによる値上げも、すんなり受け入れることができるのかもしれない。半導体不足に伴う在庫ひっ迫のため、21年のほとんどの期間で上がっていた中古車価格は、12月に約37%も上昇した。

日々の生活にかかる費用が上がり続ける事態を乗り切っていくのは、どんどんと難しくなるだろう。

特に問題なのは12月に4.1%上昇した住居費だ。アパートメント・リストのデータに基づくと、21年の米国の家賃の中央値は20%近くも高騰。住宅価格の上昇が続き、手が出なくなった買い手が市場から追い出されていく中で、22年は家賃がさらに上がると見込まれる。12月の食料品価格も6.5%上昇した。

政府による新型コロナウイルス対策の給付金や、失業保険上乗せ措置がもたらした効果が薄れてきた過去数カ月で、米国の個人所得に占める可処分所得の割合は低下し始めた。

また、新型コロナウイルスのオミクロン株が、企業とその取引先を圧迫している。そこに物価上昇が加わることで、さすがに消費者の楽観姿勢も崩れる恐れがある。

●背景となるニュース

*米労働省が12日発表した昨年12月の消費者物価指数(CPI)前年比上昇率は7%と、1982年6月以来の高い伸びだった。ロイターがまとめたエコノミストの予想には一致した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)