岸田首相はきのう、東京など1都12県にも「まん延防止等重点化措置」の発動を決めた。昨年12月、日本で初めてオミクロン株が確認された直後に「最悪の事態」に備えて発動した水際作戦の強化も、いまとなっては多少の時間稼ぎに過ぎなかったことになる。それでも比較的高い支持率を背景に岸田政権にはまだ、比較的余裕があるように見える。余裕があるうちに感染のピークを迎えられるか、先行きは依然としてよくわからない。1日の感染者が4万人を超えれば余裕どころか、政府内部は連日極度の緊張感に覆われているのかもしれない。米国では支持率の低迷にあえぐバイデン大統領が4億枚のマスクの無料配布を決めた。アベノマスクの向こうをはる“バイデンマスク”で支持率の回復を狙う。中間選挙を控えてこちらは必死のオミクロン防止対策の発動だ。

1日に10万人がオミクロン株に感染する英国。ピークの20万人に比べ感染者が半減した機をとらえ、感染防止規制を全面的に撤回するとジョンソン首相が表明した。国民に強く行動規制を求めながら、過去に複数回にわたって官邸でパーティーを開催していた事実が判明、国民から強いバッシングを受けている。首相は専門家の意見を聞き、科学的根拠に基づいて規制を撤廃すると説明する。だが国民は支持率挽回を狙った規制緩和ではないかと疑っている。未知との遭遇に直面した時、政治家が行う政策決定が本当に科学的根拠に基づいているのか、国民の受け止め方が揺れている。ジョンソン首相はひょっとして、首相に疑いの目を向ける国民感情に火をつけてしまったのかもしれない。習近平の中国は五輪を前にゼロコロナに向けて高圧的な規制の強化に踏み切った。北京に集うアスリートは本当に大丈夫か、心配になる。

気になる情報も伝わってきた。ブルームバーグによると、「メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンのブースター(追加免疫)接種を受けても、オミクロン変異株の感染を防げなかったことが南アフリカ共和国での研究で明らかになった」というのだ。オミクロン株の研究で世界をリードする南アの研究所が18日に、医学誌ランセットに掲載した論文だという。詳細な内容は掲載されていないが、「今回の研究結果は、オミクロン株に新型コロナワクチンで産生された抗体をすり抜ける能力があることを示す新たな証拠といえる」のだそうだ。これが事実ならブースター摂取で重症化は回避できても、オミクロン退治の決め手にはなりそうもない。感染防止対策は政治家にとって最大のテーマだ。科学的根拠がはっきりしない中で、政治権力者の勝手な模索が続くことになる。