[ワシントン 2日 ロイター] – 企業向け給与計算サービスのオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)とムーディーズ・アナリティクスが2日発表した1月の全米雇用報告によると、民間部門雇用者数は30万1000人減と、市場予想の20万7000人増に反して減少した。新型コロナウイルスの感染再拡大による企業活動の混乱が響いた。
減少は2020年12月以来約1年ぶり。昨年12月の雇用者数は77万6000人増と、当初発表の80万7000人増から下方修正された。
ADPのチーフエコノミスト、ネラ・リチャードソン氏は報告書で「新型コロナのオミクロン変異株により、一時的とはみられるものの雇用の伸びに与えた著しい影響によって労働市場の回復は2022年の初めに一歩後退した」と指摘した。
PNCフィナンシャルのチーフエコノミスト、ガス・フューチャー氏は「オミクロン変異株の感染拡大が収まるにつれ、労働市場はすぐに回復する」と指摘。「経済の根底にある需要は依然堅調で、企業は引き続き雇用を望んでいる。ただ、1月の雇用の落ち込みは、パンデミック(世界的大流行)が終息するまでは経済が完全に正常な状態に戻らないことを改めて認識させる」と述べた。
内訳では、レジャー・接客業で15万4000人減。貿易・運輸・公益で6万2000人減、製造業で2万1000人減、建設業で1万人減となった。
規模別では小規模企業で14万4000人減。中規模企業で5万9000人、大企業で9万8000人、それぞれ減少した。
4日にはより包括的で、注目度が高い米労働省の1月の雇用統計が発表される。
エコノミストらは、オミクロン株の感染拡大を受け、1月の雇用統計では非農業部門雇用者数が緩やかに増えたか、あるいは減少した可能性があると予想している。
米国勢調査局が1月中旬に発表した家計調査によると、21年12月29日から22年1月10日までの間に880万人が新型コロナ関連の理由で働いていなかった。
労働省の事業所調査はADP報告書とは異なり、病気で休んだり隔離されたりして調査期間中に給与が支払われなかった人は、雇用されていても失業者としてカウントされる。
ロイターのエコノミスト調査によると、1月の非農業部門雇用者数は15万人増の予想。21年12月の新規雇用者数は19万9000人となり、1年間で最少だった。
ロイターによる公式データの分析によると、米国の新型コロナ新規感染者数は1日平均46万1097人で、1月中旬の70万人超から大幅に減少している。
労働力に対する需要は強く、新規就業が可能な労働者の数は少ない。昨年末時点での求人件数は1090万件だった。
新規失業保険申請件数は3カ月ぶりの高水準を記録していたが、オミクロン株の感染の波が収まるにつれて減ってきた。
ナロフ・エコノミクスのチーフエコノミスト、ジョエル・ナロフ氏は「労働市場は、数字がどうであれ、非常に良い状態にあり、賃金上昇も堅調に続くだろう」と語った。