緊張が続くウクライナの東部で、政府軍と、一部を事実上支配する親ロシア派との戦闘が再燃する中、親ロシア派が政府軍による攻撃を理由に住民を隣国のロシアに避難させると発表したのに対し、ウクライナ政府が攻撃を真っ向から否定して非難の応酬となっています。
ウクライナ東部では、政府軍と、一部の地域を事実上支配する親ロシア派の武装勢力による戦闘が再燃し、停戦監視にあたっているOSCE=ヨーロッパ安全保障協力機構は、今月15日夜から16日夜にかけて、停戦合意に違反して爆発や銃撃が600件近くあったとしています。
こうした中、武装勢力の指導者プシリン氏は18日、「ウクライナ政府は戦闘態勢に入り、力ずくでこの地域を奪還する準備を整えている」と主張し、国境を接するロシア南部のロストフ州に住民を避難させると明らかにしました。
これに対して、ウクライナ国家安全保障・国防会議のダニロフ書記は、「真っ赤なうそだ」と否定したうえで、ロシアが意図的に流した情報だと主張し、非難の応酬になっています。
ウクライナ東部の状況についてロシアのプーチン大統領は18日、記者会見で「情勢は緊迫している」として、ウクライナ政府に停戦合意の履行を迫りました。
また、「ウクライナでは、人権が大規模かつ組織的に侵害され、ロシア語を話す人々への差別が法制化されている」と述べ、ウクライナ政府を批判しました。
この地域をめぐってアメリカのバイデン政権は、ロシア系住民がウクライナ軍から攻撃を受けたという虚偽の情報が拡散し、ロシアがウクライナへの軍事侵攻の口実にするのではないかと警戒を強めています。
ロシア国営メディア 「住民が避難」伝える
ロシア国営メディアは、ウクライナ東部ドネツク州の親ロシア派が事実上支配している地域で住民たちがバスに乗るなどして次々に避難を始めているとする様子を伝えています。
バスには、厚手の上着を着た女性や子ども、高齢者などが大勢乗っていて、中には、不安そうな表情を浮かべている人もいます。
ロシアへの避難について明らかにした親ロシア派によりますと、ドネツク州だけでおよそ70万人を避難させる計画だとしています。
一方、ロシア大統領府のペスコフ報道官は18日、プーチン大統領が避難してきた人々に対して、寝泊まりできる場所や食事の提供を行い、医療支援なども整えるよう当局に指示したほか、支援金として1人当たり1万ルーブル、日本円にしておよそ1万5000円を支給すると決めたことを明らかにしました。