[21日 ロイター] – ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ東部の親ロシア派2地域の独立を承認するとテレビ演説で表明した。緊迫するウクライナ危機において今回の決定がどういう意味を持つのか、西側諸国の対応とともにポイントを整理した。
◎親ロシア派の分離独立地域とは
ウクライナ東部にあるドンバス地域と呼ばれるドネツクとルガンスクでは、2014年にロシアが支援する分離独立派が「人民共和国」として独立を宣言したが、承認されていなかった。ウクライナ政府によると、宣言後に約1万5000人が戦闘で死亡。ロシアは紛争当事者であることを否定しているが、軍事・財政支援、新型コロナウイルスワクチンの提供、少なくとも80万人の住民に対するロシア旅券(パスポート)発行など、独立派を支援している。
◎ロシアの独立承認は何を意味するのか
ロシアはドンバス地域をウクライナの一部とは見なさないと初めて表明。これは分離独立地域に公然と軍隊を派遣し、ウクライナから独立派を保護するために同盟国として介入するという主張に道を開く可能性がある。
◎ミンスク合意はどうなるのか
ウクライナ東部の停戦と和平への道筋を示した「ミンスク合意」(14─15年)は、ロシアが親ロ地域の独立を承認したことで事実上消滅する。この和平合意はまだ履行されていないものの、これまでロシアを含む全ての当事者が紛争解決に向けた最善の機会と見なしていた。合意は親ロ2地域に対する大規模な自治を要求している。
◎西側はどう対応するのか
米欧など西側各国は数カ月にわたり、ロシアがウクライナ国境を越えて軍隊を展開すれば、厳しい金融制裁を含む強力な対応を取ると警告してきた。ブリンケン米国務長官は16日、ロシアが親ロ2地域の独立を承認すれば、「米国は同盟国、およびパートナー国と完全に協調して迅速に、かつ強硬に対応する」と表明。独立が承認されれば「ウクライナの主権と領土保全が一段と阻害され著しい国際法違反となる」と述べた。
◎ロシアは過去にも分離地域を国家承認したことがあるのか
08年にジョージアと短期間の交戦を行った後、アブハジアと南オセチアの独立を承認した。大規模な財政支援、住民のロシア国籍取得を行ったほか、数千人の部隊を駐留させている。
◎独立承認によるロシアの利点と欠点は
ジョージアの場合、ロシアは分離地域を承認することで旧ソ連周辺国への軍事駐留を正当化し、自国領土を完全に支配できないようにすることでジョージアの北大西洋条約機構(NATO)加盟構想に歯止めをかけようとした。ウクライナにも同じことが当てはまる。
一方、ロシアはミンスク合意にコミットしていると長く主張してきたにもかかわらず、それを放棄したことによる制裁と国際的非難に直面する。また、8年間にわたる戦闘で荒廃し、大規模な経済支援を必要とする2地域の責任を負うことになる。