【モスクワ、ワシントン時事】ロシアのプーチン大統領は27日、核戦力を「特別態勢」に移すよう命じた。北大西洋条約機構(NATO)による攻撃的な言動などが原因だとしている。24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、両国は停戦交渉入りで合意したが、プーチン氏は強硬姿勢を崩しておらず、成否は見通せない。
プーチン氏は核戦力を念頭に「抑止力を特別態勢に移行」させるようショイグ国防相らに命令。また、米欧の経済制裁を「違法」と非難した。
ロシア国防省は27日、自軍に戦死者が出たことを侵攻開始以来初めて確認。死者数は明らかにしていないが、ウクライナ軍の抗戦によりロシア側の損害が膨らんでいる可能性がある。
停戦交渉をめぐっては、ウクライナのゼレンスキー大統領が27日、「前提条件なし」にウクライナとベラルーシの国境地帯で行うことに同意し、タス通信によると、28日午前に始まる見通し。ゼレンスキー氏は「率直に言えば、成果を信じていない」と慎重な見方を示している。
一方、米国防総省高官は27日、ウクライナ軍の頑強な抵抗と、燃料不足を含む兵たん上の問題により、ロシア軍の行軍速度は低下し続けているとの分析を明らかにした。高官は、特に第2の都市ハリコフへの進出に支障が生じていると指摘した。
高官によると、ロシア軍はウクライナ国境地帯に集結させた部隊の3分の2を投入。制空権は確保できていない。ウクライナの首都キエフにはロシア軍の偵察部隊が入っているものの、主力は首都中心部から約30キロの地点で依然足止めされているという。
また高官は、ロシア軍がキエフ北東の都市チェルニヒウで「包囲戦術を行おうとしている兆候がある」との見解を示した。その上で、包囲攻撃では市街地に多数のロケット弾が撃ち込まれる恐れがあり、民間施設や市民が巻き添えになる可能性が高くなると懸念を表明した。