プーチン氏が西側の制裁拡大に対抗措置、国外への外貨送金禁止＜bloomberg日本語版＞2022年3月1日 8:53 JST

ロシアのプーチン大統領はウクライナ軍事侵攻に伴い西側諸国から科された制裁への対抗措置として、全ての国内居住者を対象に国外への外貨送金を禁止した。

　　制裁強化の動きはなお続いており、欧州連合（ＥＵ）はロシアの一部大物実業家を対象とする制裁措置の導入を決定。英国はロシア籍船舶への港湾サービス提供を禁じた。

Putin Strikes Back Against Global Sanctions

ロシアのプーチン大統領はウクライナ軍事侵攻に伴い西側諸国から科された制裁への対抗措置として、全ての国内居住者を対象に国外への外貨送金を禁止した

Source: Bloomberg

　　ロシアによるウクライナへの軍事侵攻後初めてとなる両国代表団の停戦交渉が２月28日、ベラルーシ国境で行われた。ウクライナ大統領府のポドリャク顧問によると、双方は交渉の結果を協議するため、それぞれの首都に戻った。

　　同顧問は双方が再協議の可能性を検討することで合意したと語った。ただロシアのプーチン大統領がウクライナ軍の降伏と、民主的に選ばれたゼレンスキー政権の排除を求めていることから、紛争の速やかな解決はなお望み薄だ。

　　一方、インタファクス通信がロシア当局者を引用して伝えたところでは、ロシアとウクライナは協議を継続し、数日中に次回の交渉ラウンドを行うことで合意した。次回の交渉はポーランドとベラルーシの国境で行われるという。

　　プーチン大統領はこの日、マクロン仏大統領と電話会談し、交渉にはオープンだと語ったが、その一方で紛争解決にはロシアの安全保障上の利益を考慮することが前提となると主張した。インタファクス通信が伝えた。

　　こうした中でもロシアは攻撃を継続。首都キエフ郊外で戦闘が発生したほか、ウクライナ第２の都市ハリコフでロシア軍による住宅地への砲撃で複数の民間人が死傷したと伝えられた。

　　ウクライナ情勢を巡る最近の主な動きは以下の通り。

ＥＵ、ロシア大物実業家らに制裁措置

　　ＥＵは対ロ制裁強化の一環として、同国の一部大物実業家を対象とする制裁措置の導入を決めた。対象者リストには、巨大金属企業の経営者として知られるアリシェル・ウスマノフ氏、アルファ・グループのオーナーであるミハイル・フリードマン氏とピョートル・アベン氏、主要鉄鋼会社を支配するアレクセイ・モルダショフ氏といった米国の制裁対象でないビリオネアが含まれる。

ＳＷＩＦＴ制裁が「意図せぬ結果」招く恐れ－ＪＰモルガンＣＥＯ

　　米銀ＪＰモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者（ＣＥＯ）は、国際銀行間通信協会（ＳＷＩＦＴ）の国際決済ネットワークからロシアの一部銀行を排除することで、第三者が制裁回避策を見いだすなど「意図せぬ結果」を招く恐れがあるとの認識を示した。

ＥＵ、ロシアの報復に備え－エネルギー相緊急会合

　　 ＥＵは対ロシア制裁への報復措置として同国がＥＵ向け天然ガス供給を停止する可能性があるとして、天然ガス供給の混乱に備えている。ＥＵ各国のエネルギー相は２月28日、緊急会合を開き、ロシアのウクライナ侵攻を受けて考えられ得るさまざまな供給ショックシナリオを議論した。欧州委はロシア一国への依存脱却を目指し、来週に戦略を策定する予定。

ＧＭはロシアへの輸出停止－ロイター

　　米ゼネラル・モーターズ（ＧＭ）はロシアのウクライナ侵攻を受け、追って通知があるまでロシアへの全ての自動車輸出を停止する。同社を引用してロイター通信が伝えた。

ウクライナが次回交渉ラウンドに同意－ロシア当局者

　　ロシアとウクライナは協議を継続し、数日中に次回の交渉ラウンドを行うことで合意したと、インタファクス通信がロシア当局者を引用して伝えた。次回の交渉はポーランドとベラルーシの国境で行われるという。

ロシア：ウクライナが次回交渉ラウンド実施に同意－ＩＦＸ (1)

プーチン氏、ロシア住民による国外への外貨送金禁止

　　ロシアのプーチン大統領は国内の全住民に対し、国外への外貨送金を禁止した。この措置はウクライナ侵攻を巡り米国や欧州諸国がロシアに科した制裁に対する報復の一環で、３月１日に発効する。

ロシア、まだ制空権掌握していない－米国

　　ロシアのプーチン大統領は侵攻に用意した兵力の約75％を今や投入したと、米国防当局者が述べた。ロシアはロケット砲やミサイル、有人爆撃機などさまざまな戦力を展開しているにもかかわらず、制空権をまだ掌握できていないともみている。

　　キエフ包囲に向かうロシアの進軍はウクライナ側の抵抗で依然ペースが鈍く、兵たんや補給の問題も抱えていると、同当局者は指摘した。

ウクライナ、「戦時国債」発行へ

　　ウクライナ政府はロシアに対する軍事的な抵抗を支える資金を調達するため、債券を発行する計画だ。１年物国債の入札は１日に行われ、「戦時下の財政需要を切れ目なく確実に支える」ことを目的とする。

ポーランドが警告、ウクライナ国境の往来をロシアが遮断する恐れ

　　ポーランドのモラウィエツキ首相は、ロシアによる侵攻から逃れるウクライナの人々に提供する人道支援で「迅速に行動しなければならない」と発言。ロシアがポーランド・ウクライナ国境の往来を遮断し得る攻撃も辞さない構えを見せているためだと、ワルシャワで語った。

　　現在１日当たり最大10万人がウクライナからポーランドへ越境している。

ポーランドが警告、ウクライナ国境の往来をロシアが遮断する恐れ

マクロン仏大統領、プーチン大統領と電話会談

　　フランスのマクロン大統領はプーチン大統領に対し、ウクライナでの即時停戦を支持するよう促した。仏大統領府が発表した。またマクロン氏は、全ての爆撃と民間人や住宅地に対する攻撃の停止を呼び掛け、キエフ南部の道路など民間インフラに危害を加えないよう訴えた。ロシアは民間人を標的にしていないと主張している。

ＩＯＣ、競技からロシアとベラルーシの排除呼び掛け

　　国際オリンピック委員会（ＩＯＣ）は世界全地域で開かれる競技からロシアとベラルーシの全ての選手・関係者を排除するよう各競技団体に呼び掛けた。

米国と同盟国、原油備蓄放出を検討

　　米国と同盟国は合計6000万バレル前後の原油備蓄を協調して放出することを検討している。ロシアのウクライナ侵攻で原油価格がバレル当たり100ドルを超えたことに伴う措置。事情に詳しい関係者３人が明らかにした。決定は下されていないが、米国は国際エネルギー機関（ＩＥＡ）加盟国との協調を進めているという。

ウクライナ第２の都市、住宅地で大規模爆撃－報道

　　ウクライナ第２の都市ハリコフでは、住宅地で激しい爆撃が行われ、民間人に死傷者が出たと、ニュースサイト「ウクラインスカ・プラウダ」が市当局の情報として伝えた。同市のテレホフ市長は「これは戦争だ。本物の戦争だ」と語ったという。戦闘はロシア国境に近い市北東部の複数箇所で起きたとしている。

　　このほか首都キエフの郊外や、北部の都市チェルニヒフでも戦争が続いている。

日銀、ロシアの外貨準備を凍結へ－日経

　　日本銀行はロシア中央銀行から預かる外貨準備を凍結すると、日本経済新聞が電子版で伝えた。2021年時点で金額は４兆－５兆円規模だったとみられるという。

ロシア、36カ国の航空会社に対して領空通過を禁止

　　ロシアは36カ国の航空会社に対して領空通過を禁止すると発表した。飛行禁止対象のリストにはＥＵ加盟国や英国が含まれるが、米国や日本は入っていない。

ロシア、欧州など36カ国対象に領空飛行を禁止－日本や米国は含まず

米国、ロシア中銀との取引を禁止－財務省や政府系ファンドも制裁対象

　　バイデン米政権は28日、米国民および米企業がロシア中央銀行やロシア財務省、同国政府系ファンドである国民福祉基金と取引を行うことを禁止した。

バイデン政権、ロシア中銀に制裁－米国民や米企業との取引禁止 (1)

日本が追加制裁、ロシア中銀との取引を制限へ－共同

　　岸田首相は28日夜、ロシア中銀との取引を制限するほか、ロシア軍の侵攻拠点となっているベラルーシのルカシェンコ大統領らを制裁対象に加える追加制裁を記者団に発表したと、共同通信が報じた。

　　またウクライナに侵攻したロシアを強く非難し、即時撤兵を求める決議案を与野党がまとめ、３月１日の衆院本会議で採択される見通しだと共同通信は伝えている。

ウクライナを出国した避難者数、50万人超える－国連

　　ロシアの侵攻が始まって以来、ウクライナから避難した人の数は50万人を超えたと国連難民高等弁務官のフィリッポ・グランディ氏がツイッターで明らかにした。国連は先週、400万人が難民となってウクライナから近隣諸国に押し寄せるだろうと予測していた。

シンガポールもロシアに対し制裁

　　シンガポール政府はロシアに対して一方的な制裁を科す。シンガポールが外国に対し、国連安保理の承認なく制裁を科すのは数十年ぶりだと、元外交官が語った。

　　シンガポールは「ウクライナの人々を従属させる、または危害を加えるための」兵器として使用が可能な品目の輸出に制限を課す計画だと、バラクリシュナン外相は説明。事情に詳しい関係者によると、同国の大手銀行は石油や液化天然ガス（ＬＮＧ）を含むロシア産原料に対する貿易金融業務も制限される。

欧州当局、ズベルバンク子会社を凍結

　　ＥＵ当局はロシア最大の銀行ズベルバンクが域内で展開する主要事業を凍結した。欧州中央銀行（ＥＣＢ）はズベルバンク子会社のズベルバンク・ヨーロッパおよび同行のクロアチアとスロベニアの支店について、流動性の状況悪化を理由に破綻状態にあるか破綻する公算が大きいとの判断を示していた。

ＥＣＢ、ズベルバンク・ヨーロッパなど破綻の可能性－ロ最大行子会社

ロシア、制裁の影響最小化に注力へ　　

　　米国と欧州諸国がロシアに科した直近の制裁は「厳しい」が、ロシア政府はこれに長年備えており、影響の最小化に注力すると、ペスコフ大統領府報道官は語った。

　　ペスコフ氏によると、プーチン大統領は28日中に経済担当の主要スタッフと会談し、状況を協議する。同報道官は、大統領個人が制裁対象となったことを問われると、「ばかげていて近視眼的だ」と反論した。

ゼレンスキー大統領、ＥＵにウクライナの即時受け入れを要請

　　ウクライナのゼレンスキー大統領は欧州連合（ＥＵ）に対し、ウクライナを直ちに「受け入れる」よう要請した。

ベラルーシ中銀が利上げ

　　ベラルーシ国立銀行（中央銀行）は、政策金利であるリファイナンス金利をこれまでの9.25％から12％に引き上げた。

　　中銀は、金融安定の維持と「地政学的状況の急激な悪化」および西側諸国の対ロシア制裁を背景とするインフレを抑制するため利上げを決定したと説明した。

ロシア中銀が利上げ

　　 ロシア中央銀行は28日、主要政策金利を20％に引き上げるとウェブサイトで発表した。従来は9.5％だった。理由として経済の「根本的」変化を挙げた。

ロシアが大幅利上げ、03年以来の高水準に－制裁対応で通貨防衛強化

ロシア、非居住者の証券売却を一時禁止

　　ロシア中央銀行はブローカー各社に対し、28日から非居住者による証券売却を一時的に禁じた。同中銀も含まれる西側諸国による広範な制裁から、資産を守る取り組みの一環だ。

原題：Ukraine Fighting Overshadows Chance of Russia Talks’ Success (1)、Russia Retaliates as Sanctions Over Ukraine Grow: Ukraine Update、Russia Says Ukraine Agreed to Another Round of Talks: IFX、Putin’s Ban on Foreign Debt Service Raises $478 Billion Question、Europe Freezes Sberbank Units as Sanctions Squeeze Liquidity (1)、Russia, Ukraine Officials Meet as Ruble Sinks: Ukraine Update（抜粋）