[ワシントン 4日 ロイター] – 米労働省が4日発表した2月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比67万8000人増と、市場予想の40万人増を大幅に上回った。失業率は3.8%と、2020年2月以来の水準に改善。米経済は地政学的な緊張の高まりのほか、物価上昇や金融引き締めなどの逆風に耐えられるとの楽観的な見方が強まった。

1月の雇用者数の増加幅は当初発表の46万7000人から48万1000人へ上方改定された。2月の市場予想は、20万人増から73万人増まで幅があった。

労働市場に30万4000人が新たに参入したにもかかわらず、失業率は1月の4.0%から0.2%ポイント低下。時間当たり平均賃金は31.58ドルと、前月比ではほぼ横ばいにとどまったものの、前年同月比で5.1%上昇したほか、週当たり労働時間は34.7時間と、前月の34.6時間から増加した。

キャピタル・エコノミクス(ニューヨーク)のシニアエコノミスト、マイケル・ピアース氏は「実体経済にかなりの勢いがあることが改めて示された」と指摘。「米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを計画通りに進める自信につながる」と述べた。

労働参加率は62.3%と、1月の62.2%から上昇。人口に占める労働力人口の割合は59.9%と、59.7%から上昇。共に20年3月以来の高水準を付けた。

ただ、経済的な事情によりパートタイムで働く人の数は41万8000人増の410万人。働き口がなくて就職を諦めた人や、正規雇用を望みながらもパートタイムで働く人を含めた、より広範な失業率は7.2%と、前月の7.1%から上昇した。

業種別では、レジャー・接客が17万9000人増。新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大で大きな影響を受けていたが、全体の伸びを牽引した。このほか、外食が12万4000人、宿泊が2万8000人、それぞれ増加した。

専門職・企業サービスは9万5000人増、小売は3万7000人増、製造は3万6000人増、建設は6万人増。政府は2万4000人増加した。

FRBのパウエル議長は今週の米連邦議会での証言で労働市場を「非常に引き締まっている」と表現し、3月15─16日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)で25ベーシスポイントの利上げを支持した。インフレが想定通りに緩和しない場合は「より積極的に対応する用意」があると明言した。

ロシアが先週、ウクライナに対する戦争を始め、米国と同盟国が各種のロシア制裁を発動して以来、原油価格は1バレル=100ドルを超えて急騰している。

ウェルズ・ファーゴ(米ノースカロライナ州シャーロット)のシニアエコノミスト、サム・ブラード氏は「世界には今、ロシアとウクライナ紛争から高騰するインフレまで懸念されるニュースがたくさんある」とした上で、「しかし米国の雇用回復は殺伐とした状況の中で明るい話題となり続けている」と指摘した。

金融市場は、1月の雇用統計と高インフレを受けて0.50%ポイントの利上げを織り込んでいた。しかし、ロシアとウクライナの戦争の影響が懸念される中、現在は想定外となっている。

エコノミストは年内に最大7回の利上げを見込んでいる。