[ブリュッセル 4日 ロイター] – 北大西洋条約機構(NATO)は4日、ウクライナが求めている飛行禁止区域の設定について、NATOが直接的に介入すれば、欧州全土を巻き込む広範な戦争に発展する恐れがあるとして、現時点では設定しない方針を示した。
NATOのストルテンベルグ事務総長は記者会見で「NATOはこの紛争に加わっていない。この紛争がウクライナの国境を越えてエスカレートすることを防ぐ責任を負っている」とし、ウクライナの絶望的な状況は理解しているとしながらも、NATOが飛行禁止区域を設定すれば、多くの国を巻き込む「欧州における本格的な戦争につながる恐れがある」と述べた。
その上で、NATOの飛行禁止区域設定を実施する唯一の方法は戦闘機を派遣してロシア軍機を撃墜することになるとし、こうしたエスカレーションのリスクは大きすぎると指摘。「NATOの戦闘機がウクライナ領空で活動することも、NATO軍がウクライナ領内で活動することもあってはならないと同盟国は合意している」と述べた。
米国のブリンケン国務長官は、NATOはウクライナの領土を「隅々まで」攻撃から守ると表明。「NATOは防衛のための同盟であり、紛争は望まない。ただ紛争が起きれば、NATOに対応する用意はある」とし、「ロシアのプーチン大統領に大きな代償を払わせる。 ロシアが路線を変更しない限り、一段と孤立化させ、経済的な痛手を増大させる」と述べた。
また、ロシア軍は民間人に対する攻撃を含め「一段と残酷な手法」で攻撃していると非難。エネルギー関連の制裁を導入する案については、エネルギーの世界的な供給に即座に影響が及び、米国のガソリン価格上昇につながる一方、ロシアの原油収入が増えるとの考えを示した。
欧州連合(EU)は軍事面ではなく、経済制裁で事態に対応。EUの外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は、ロシアに対する新たな制裁を巡るあらゆる選択肢が残っているとし、EUがロシアからの天然ガス輸入を停止する可能性について「あらゆる手段を検討する」と述べた。
ウクライナのゼレンスキー大統領はロシア軍による砲撃が激化する中、西側諸国に対し飛行禁止区域の設定を要請。ウクライナのクレバ外相はこの日のビデオメッセージで、プーチン大統領に「ウクライナをシリアのようにさせてはならない」とし、NATO外相に対応を呼び掛けていた。
一方、EU諸国は一段の金融制裁を科すと表明。当局者によると、EUはロシアの国際通貨基金(IMF)へのアクセスを制限することを検討しているという。
ボレル代表は「これはプーチン氏の戦争であり、プーチン氏しか終わらせることはできない」とした。
ウクライナ中銀総裁は西側諸国に対し、ロシアの銀行の資産を全て凍結し、市場へのアクセスなどを停止するよう要請したが、EUがいつ、どのような追加制裁に同意するかは不明。
アイルランドによると、制裁第4弾はより多くのロシアの銀行に影響が及ぶほか、欧州の港からロシアの船舶を締め出し、鉄鋼、木材、アルミニウム、石炭などの輸入を制限する可能性があるという。
主要7カ国(G7)外相はこの日、ウクライナの民間人に対する「ロシアの継続的な攻撃」を「深く懸念」し、戦争犯罪の責任を追及すると表明。共同声明で、「無差別攻撃は国際法で禁止されていると改めて強調する。民間人に対する無差別攻撃を含む戦争犯罪について、責任を追及する」とした。