イランのタスニム通信が7日報じたところによると、イラン政府高官は、主要国との核合意復活に向けた協議の最終段階におけるロシアの「妨害」を批判した。ロイターが報じている。これだけだと何のことか分からないが、イランの核合意復活交渉が最終局面を迎えている中で、イランがロシアを名指しで批判しているという話だ。メディアは核合意が近々成立するとの見通しを流している。そんな中で交渉団の有力メンバーであるロシアが、「ウクライナ紛争を巡る対ロ制裁がイランとの貿易に打撃を与えないことを保証するよう米国に要求した」(ロイター)ため、交渉の先行きが不透明になっているというのだ。ロシアはイランの核合意復活交渉団の一員である。イランとロシアはもともと親密な関係にある。そんな中でイランの高官がロシアに怒りをぶつけている。すわ、これは事件か。

ロシアがこの交渉にイチャモンをつける理由は何か。「合意復活を先送りしてイランの石油市場への復帰を遅らせることで、ロシアは原油価格を押し上げ、自国のエネルギー収入を増やそうとしている」と、半官半民のタスニム通信は推測する。ありうる話だ。ロシアのノワク副首相はきのう、「欧米がロシア産原油の輸入を禁止すれば、原油価格は1バレル=300ドルを超える水準に上昇する」との見方を示し、西側諸国を脅している。経済制裁でロシア国債のデフォルトリスクが高まっている。ロシアは国家として崩壊に向かいつつある。もうなんでもありだ。友好国・イランの“悲願”でもある核合意の復活。それさえも妨害しようというわけだ。米国も複雑だ。いままで慎重だった核合意、ウクライナ問題の泥沼化に合わせるように合意を急ぎ出したようにみえる。イランを市場に復帰させ、原油価格の暴騰を抑えようという狙いか。米国も単純ではない。

ロシアのウクライナ侵攻に中立姿勢を貫く中国。こちらも本音は複雑なようだ。王毅外相はきのうの記者会見で、ロシアとの外交関係は「揺るぎない」と胸を張った。ウクライナに武力侵攻したロシアに対してはあくまでも「中立」であると主張、「侵攻」の事実すら認めていない。そして「平和に向けた協議促進で引き続き建設的な役割を果たす」と自国の立場を説明する。「引き続き」というから既に水面下で仲介に乗り出しているのかもしれない。中立国だからこそ仲介が可能になるという理屈だ。その上で、「ロシアとは戦略的決意を維持し、新たな時代の包括的戦略パートナーシップを維持していく」(引用はすべてロイター)という。ロシアとの友好関係を強調すればするほど、中国のロシア離れが透けて見えるような気がするのだが、深読みのしすぎか。いずれにしても同盟国ではない中国とロシア。側でみるより内情は複雑かもしれない。