[ワシントン 9日 ロイター] – バイデン米大統領は9日、中央銀行が発行するデジタル通貨「デジタルドル」に関する大統領令に署名した。デジタルドルのリスクや利点を踏まえ、必要な技術的インフラを評価するよう関係省庁に指示。さらに連邦準備理事会(FRB)に対し、研究開発に向けた取り組みを継続するよう求めた。

暗号通貨市場は昨年11月時点で3兆ドルを超える規模に達しており、膨張する市場への幅広い監視は米国の国家安全保障や金融の安定、米国の競争力確保のほか、増大するサイバー犯罪の脅威を食い止めるためにも不可欠であると考えられる。

ある政権幹部は、米国が世界の主要な基軸通貨としてのドルの役割を考慮し、慎重にではあるがデジタルドルの開発を進めていくと指摘。「この方向に進むことは米国にとって大きな意味を持つため、その分析には非常に慎重でなければならない」と語った。

FRBは1月、デジタル通貨に関する審議文書を公開。デジタルドルを開発すれば、決済技術の発展とともに決済スピードが上がり家計に安全な選択肢を提供できるが、金融安定を巡るリスクやプライバシーに関する懸念も出てくるとの見解を示した。

米シンクタンク大西洋評議会の調べによると、世界の9カ国が中央銀行デジタル通貨(CBDC)を立ち上げているほか、中国を含む16カ国がデジタル資産の開発を始めており、米政府内ではドルの一定の優位性が中国によって奪われるのではないかと懸念する声も出ている。

政府高官は、米ドルが透明性や法の支配、FRBの完全な独立性へのコミットメントなど、引き続き重要なファンダメンタルズによって支えられているとした上で、「ドルの役割は、これまでも、そしてこれからも、国際通貨システム全体の安定に欠かせないものであって、外国のCBDC導入そのものがドルの優位性を脅かすことはない」と強調した。

CBDCを巡っては、中国が導入競争で先頭を走っており、日銀も実証を始めている。