ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる10日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナとは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
ウクライナ クレバ外相「ロシアは停戦するつもりない印象」
ロシア側との会談後、記者会見したウクライナのクレバ外相は「ウクライナ国内で苦しんでいる人に人道支援を届ける必要があることをラブロフ外相には伝えた」と述べました。
一方で停戦については「現時点でロシアは停戦するつもりはない印象を受けた。ウクライナは立ち向かう意思があり、決して屈することはない」と述べました。
外相会談が終了 ウクライナ クレバ外相「進展なかった」
ロシア側との会談後、記者会見したウクライナのクレバ外相は「交渉について話し合ったが進展はなかった。再び交渉をする用意はある。交渉の目的は戦争を止め、ウクライナの市民を救い、ロシア軍の占領から解放することだ」と述べました。
ロシア ラブロフ外相 “ベラルーシでの交渉を重視”
ウクライナ側との会談後、記者会見したロシアのラブロフ外相は「交渉を続けることは重要だが、ベラルーシで行っているロシアとウクライナとの代表団による交渉の妨げにはなってはならない。ベラルーシでの交渉で、真剣に話し合いたい」と述べ、ベラルーシで行われているロシアとウクライナの代表団による交渉を重視する考えを示しました。
また、ラブロフ外相は、「ヨーロッパなど海外からのウクライナへの兵器の供与は非常に危険だ」と述べるとともに、アメリカがウクライナでの生物兵器の開発に関与していると一方的に批判しました。
また、ラブロフ外相は「もちろん私たちはウクライナが中立であることを望んでいる。ヨーロッパの国々とともにウクライナの安全保障を議論する用意がある」と述べ、ウクライナをNATO=北大西洋条約機構に加盟させない「中立化」を求める姿勢を改めて示しました。
また、「ウクライナの『非軍事化』も必要であり、これを遅らせることはできない」と強調しました。
一方で、ラブロフ外相は、ウクライナのクレバ外相との間では、停戦に合意するかどうかは議論されなかったと述べました。
トルコ外相「外交努力を続けていく」
会談のあと、トルコのチャウシュオール外相は「3者会談を行った。私たちの地域に平和が再び戻ってくることを願っている。ロシアとウクライナの間を取り持つべく、外交努力を続けていく」とツイッターに投稿し、仲介外交を続けていく姿勢を改めて示しました。
マリウポリ 病院で3人死亡 ロシア軍の攻撃で 地元当局
ウクライナの東部マリウポリの地元当局は、産科などが入る病院が9日、ロシア軍の攻撃を受け、女の子1人を含む3人が死亡し、医師など17人がけがをしたと発表しました。
「もう大丈夫だよ」ウクライナ人の女性など3人が日本に避難
ロシアによる軍事侵攻を受け先月、ウクライナを出国し、ポーランドなどを経由して娘が暮らす日本に避難してきたウクライナ人の女性など3人が10日、羽田空港から入国し、涙を流しながら抱き合い、家族との再会を喜びました。
日本に避難してきたのはウクライナ東部に住んでいたリボフ・ヴィルリッチさん(59)と、孫のブラッド・ブラウンさん(12)など3人です。
羽田空港のロビーでは、娘のユリアさん(37)が日本人の夫や、子どもとともに出迎え、「もう大丈夫だよ」などと声をかけ、涙を流しながら抱き合い再会を喜びました。
ヴィルリッチさんは、持病で定期的に薬を服用する必要があり、ロシアによる軍事侵攻が始まった翌日の先月25日に日本への避難を決断したということです。
その後、ポーランドとフィンランドを経由し、今月2日に日本に到着しましたが新型コロナの検査で陽性となり、ホテルでの待機期間が終了した10日、入国しました。
ヴィルリッチさんは「同じように小さい子どもを連れて避難する人たちをたくさん見ました。日本は遠かったですが無事、到着できたのでようやく安心して寝られます。ただ、ウクライナにはもう1人の娘が夫婦で残っているのでとても心配です」と話していました。
孫のブラウンさんは「ウクライナを出る道中で車やガソリンスタンドなどで攻撃のあとをたくさん見ました。どこにいても、いつミサイルで攻撃されるかわからず恐怖を感じていたので日本に着いて安心しています」と話していました。
母親と再会したユリアさんは「持病がある母をずっと心配していたので会えてとても安心しています。出国してから、大変な状況の中を日本まで来たと思うのでリラックスさせてあげたい」と話していました。
初の外相会談が始まる
ロシアのラブロフ外相とウクライナのクレバ外相が、トルコ政府の仲介で、軍事侵攻が始まって以来初めてとなる会談をさきほど、日本時間の午後5時すぎからトルコ南部のアンタルヤで行っています。
ロシア大統領府のペスコフ報道官は9日、「交渉の継続という点で非常に重要だ」としていますが、クレバ外相は「率直に言って期待は低い」と話しています。
ウクライナ側が停戦やロシア軍の撤退を求めているのに対し、プーチン大統領は停戦の条件として、ウクライナがNATOに加盟しないことを法的に保証する「中立化」に加え、「非軍事化」なども強く要求しています。
ロシア軍は、首都キエフの包囲に向けて軍の部隊を進めるなど、各地で攻勢を強めていて、初の外相会談を契機に、双方の主張の隔たりが埋められるかが焦点です。
ユニセフ「避難を余儀なくされた子ども すでに100万人」
ロシアによる軍事侵攻を受けてウクライナから周辺国に逃れる人が急増する中、ユニセフ=国連児童基金の報道官は、避難を余儀なくされた子どもの数はすでに100万人にのぼるとして深刻な事態に強い懸念を示しました。
ウクライナ西部のリビウで活動を続けるユニセフのエルダー報道官が9日、NHKのインタビューに応じました。
ウクライナから周辺国に逃れた人はすでに200万人を超えていますが、エルダー報道官は「わずか10日あまりで子どもだけですでにおよそ100万人が避難を余儀なくされた。第2次世界大戦以降、起きたことがない事態だ」と述べ、強い懸念を示しました。
ウクライナ応援の動画を発信 ホストタウンの東京 日野市
東京オリンピックで銅メダルを獲得したウクライナ人の空手選手をホストタウンとして受け入れた東京 日野市では、当時、選手と交流した空手道場の子どもたちが参加してウクライナを応援する動画を発信しています。
日野市は、去年の東京オリンピックで銅メダルを獲得したウクライナのリビウ出身のホルナ・スタニスラフ選手(33)ら、空手の選手団のホストタウンとして事前キャンプを受け入れ、当時、市内の空手道場の子どもたちが選手たちと交流しました。
日野市は、ウクライナの人たちが平穏な日々を早く取り戻せることを願って選手と交流した空手道場の子どもや大人およそ50人が参加して今月5日、応援動画を作成しました。
撮影した映像は英語の表記をつけて動画投稿サイトにアップされ、市の職員がSNSでウクライナの選手たちに送ったところ、一部の選手から「サポートを本当にありがとう」という内容のメッセージが送られてきたということです。
大手企業 ロシアでのビジネス見合わせの動き 相次ぐ
ウクライナへの軍事侵攻をめぐりロシアに対する経済制裁が打ち出されたことを受けて、大手企業がロシアでのビジネスを見合わせる動きが相次いでいます。
このうち、ソニーグループはゲーム機の「プレイステーション」とソフトウェアについて、ロシアへの出荷を停止し、合わせてロシア向けのオンラインストアについても運営を停止したと発表しました。
また、ソニーグループでは、ロシアでの新作映画の公開も中止しています。
日立製作所はグループの日立建機がロシアで行っている建設機械の製造や販売を当分の間、停止するほか、別の子会社が手がけるデータを保存する記憶装置の輸出も順次停止すると発表しました。
また、化粧品大手の資生堂もロシアの販売代理店向けに行っている化粧品などの輸出を停止すると発表しました。
現地法人を通じたテレビCMや雑誌などの広告も取りやめるとしています。
米民間企業 ウクライナ東部マリウポリの衛星写真を公開
衛星を運用するアメリカの民間企業「マクサー・テクノロジーズ」は現地時間9日午前10時すぎにウクライナ東部のマリウポリを撮影した写真を公開し、住宅やアパート、店舗などの民間施設に甚大な被害が出ていると説明しています。
公開された写真はマリウポリの市内の東西およそ12キロにわたって撮られた9枚で、このうち、住宅街を撮影した写真を軍事侵攻の前の写真と比べるといくつもの住宅が壊されていることが確認できます。
また、商業施設を撮影したとする写真では、建物全体が激しく損傷している様子がうつっています。
米議会下院 ウクライナ緊急支援で総額136億ドルの予算案可決
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて、アメリカ議会下院は、ウクライナへの兵器の供与や人道支援などのために総額136億ドル、日本円でおよそ1兆6000億円を拠出することを含む予算案を超党派の賛成で可決しました。
法案には▽ウクライナへの兵器の供与などに35億ドル▽ウクライナの周辺国にアメリカ軍の部隊を派遣する費用におよそ30億ドルのほか、▽食料や医薬品などの人道支援が含まれています。
法案は近く上院でも可決される見通しで、バイデン大統領の署名を経て成立する見通しです。
日本航空 ロシアからの帰国ルート確保検討も断念
ロシアからの帰国ルートを確保しようと、日本航空は、モスクワ周辺の空域を避け、ウラジオストクからの臨時便を運航しようとしましたが、断念しました。
経済制裁の一環で、ロシア上空を飛行する航空機については保険が適用されなくなるおそれがあるためとしていて、日本人の帰国が難しい状況が続いています。
ウクライナ情勢の緊迫化で、ロシアと日本を結ぶ直行便はすべて欠航しているほか、中東のトルコやカタールで乗り継いで日本に向かう便も、チケットが取りづらくなっています。
航空券価格が高騰 モスクワ→東京 片道で50万円以上も
ロシアの航空当局がロシアの航空会社に対して、国際線の運航を停止するよう勧告したことなどを受けて、ロシアから日本への直行便やヨーロッパに向かう便は欠航になっています。
この影響などで、ロシアから日本に帰国するルートは中東を経由するものなどに限られていて、航空券が取りにくくなったり、価格が高騰したりしているということです。
3年前、都内からロシアに留学し、バレエを学んでいる女性は9日、NHKの取材に応じ「日本への帰国を考え、航空券を調べていたところ、モスクワと東京を結ぶ直行便は、欠航になっていました。これまで往復で12万円ほどで行き来できていたのが、今は、中東を経由するルートになり、片道だけで50万円以上になっていた。日本人留学生の中には、身の安全を考え、高い航空券を買って帰国した人もいる」と話していました。
ロシア“米などがウクライナで生物兵器開発に関与” 米は否定
ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始して2週間となるなか、ロシアはアメリカなどがウクライナでの生物兵器の開発に関与していると主張し、これに対し、アメリカが真っ向から否定する事態となっています。
ロシア外務省のザハロワ報道官は9日、アメリカが関与している生物兵器の開発計画の証拠を隠滅しようとした文書がウクライナで見つかったなどと一方的に主張してアメリカなどを非難しました。
これについてアメリカの国防総省や国務省の報道官は9日、相次いで「お笑いぐさで、ばかげている」とか「ロシアがウクライナで行っているおぞましい行為を正当化するためにうその口実をねつ造している」などと真っ向から否定しました。
“米軍基地経由でウクライナに戦闘機”ポーランド提案を米が拒否
アメリカ国防総省のオースティン長官は、ポーランドの国防相と電話会談し、ドイツにあるアメリカ軍基地を経由してウクライナに戦闘機を供与するというポーランド側の提案を拒否しました。
国防総省は、戦闘機の供与に反発するロシアとの間で、軍事的な緊張を高めるおそれがあることなどを理由に挙げています。
欧米諸国が、ロシアの軍事侵攻を受けるウクライナへの武器の供与を進める中、ポーランドはウクライナ軍が扱いに慣れている旧ソビエト製のミグ29戦闘機をドイツにあるアメリカ軍基地を経由させて供与し、代わりにアメリカから別の戦闘機を受け取る形を提案していました。
これについてアメリカ国防総省のカービー報道官は9日の記者会見で、オースティン国防長官がポーランドのブワシュチャク国防相と電話会談し「現時点では、ウクライナへの追加の戦闘機の輸送は支持できない」と述べ、提案を拒否したことを明らかにしました。
ロシアの侵攻後初 両国の外相会談へ
ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始して10日で2週間となり、一部の戦闘地域では避難も始まりましたが、市民の犠牲に歯止めがかかっていません。
10日は、トルコ政府の仲介で、軍事侵攻が始まってから初めて、ロシアのラブロフ外相とウクライナのクレバ外相が対面で会談します。
9日、ロシア大統領府のペスコフ報道官は「交渉の継続という点で非常に重要だ」と述べたのに対し、ウクライナのクレバ外相は停戦などに向け強い立場で臨む姿勢を示す一方「率直に言って期待は低い」としました。
ウクライナ側は、ゼレンスキー大統領の与党や大統領府の幹部が、これまで目指してきたNATO=北大西洋条約機構への加盟には当面は、必ずしもこだわらない考えを示し、ウクライナの中立的な地位についても議題になり得るとしています。
ただ、ロシアのプーチン大統領はこれまで、停戦の条件として、ウクライナがNATOに加盟しない「中立化」に加え、「非軍事化」なども強く要求していて、交渉による事態の打開は見通せない状況です。
ザポリージャ原発 監視システムからのデータ送信が停止
IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は9日、声明を発表し、ウクライナのザポリージャ原子力発電所に設置された監視システムからのデータ送信が停止したことを明らかにしました。
チェルノブイリ原発でも同様のトラブルが起きたと8日発表していました。
いずれの原発もロシア軍に占拠されていて、声明では「大量の核物質が存在している2つの原発からIAEA本部へのデータ送信が突然、中断したことを懸念している」としています。
詳しい原因などは、現時点では分かっていないということです。
ゼレンスキー大統領 “プーチン大統領との直接会談を”
ウクライナのゼレンスキー大統領は、9日に公開されたドイツメディア「ビルト」とのインタビューで、平和のために何を提供する用意があるのかという質問に対し「あらゆる交渉における目標は、ロシアとの戦争を終わらせることだ。一定の措置を講じる用意はある」と述べました。
そのうえで「妥協することが自分の国に対する裏切りであってはならず、相手も妥協する用意がなければならない。大統領どうしの直接の接触がまだなく、詳細については語ることはできない。2人の大統領が対話をして初めてこの戦争を終わらせることができる」として、プーチン大統領との直接会談の必要性を強調しました。
またゼレンスキー大統領は9日、ツイッターで、東部マリウポリの産院がロシア軍の攻撃を受け、がれきの下敷きになっている人がいると明らかにし「残虐だ。世界はいつまでテロを無視する共犯でいるつもりなのか。いますぐ空を閉ざせ。殺りくを止めろ」などと書き込みました。
モスクワのマクドナルドに駆け込み
マクドナルドがロシアにある全店舗を一時閉鎖すると発表したことを受け、首都モスクワでは閉店前に多くの人が詰めかけていました。
ロシアでマクドナルドは、ソビエト時代の末期にモスクワの中心部に1号店が開店してから広く親しまれ、おととし12月にはウラジオストクなどロシア極東にも進出していました。
EU ロシアとベラルーシへの追加制裁発表
EUは9日、ロシアとベラルーシに対する追加の制裁を発表しました。
それによりますと、SWIFTと呼ばれる国際的な決済ネットワークからベラルーシの3つの金融機関を締め出すとともに、プーチン政権に近いとされる「オリガルヒ」と呼ばれる富豪など160人を新たにEU内の資産凍結などの対象としました。
さらに、これまでに科した金融面の制裁の実効性を高めるため、暗号資産を対象に含めることを確認したとしています。
ウクライナの死者 “少なくとも516人 37人は子ども”
国連人権高等弁務官事務所は、ロシアによる軍事侵攻が始まった2月24日から今月8日までにウクライナで少なくとも516人が死亡したと発表しました。このうち37人は子どもだということです。
亡くなった516人のうち111人が東部のドネツク州とルガンスク州で、ほかの405人は首都キエフや第2の都市ハリコフ、北部のチェルニヒウ、南部のヘルソンなど各地で確認されています。
また、UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシアによる軍事侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、8日時点で215万人に上っています。
このうちおよそ6割にあたる129万人余りがポーランドに避難したということです。また、ロシアに避難した人は9万人余りとなっています。
WHO事務局長 “医療機関への攻撃で10人死亡”
WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は9日、記者会見で、ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナでこれまでに医療機関に対して18回の攻撃があり、10人が死亡、16人がけがをしたと明らかにしました。
日本政府 国際刑事裁判所の捜査支持で付託手続き
ロシアのウクライナへの軍事侵攻をめぐって、オランダのハーグにあるICC=国際刑事裁判所が戦争犯罪や人道に対する罪について捜査すると発表したことを受けて、政府は9日、捜査を支持するため付託の手続きをとりました。
外務省によりますと、ICCに加盟するおよそ120の国や地域の中でも捜査を支持するために付託の手続きをとる動きが広がっていて、日本の付託は41番目だということです。
ハリコフでは8歳の男の子も負傷「破片があごから突き刺さった」
ロシア軍の攻撃にさらされているウクライナ第2の都市ハリコフの救急病院には、負傷した人たちが連日、運び込まれています。
8日には、負傷した8歳の男の子が口にチューブを入れた状態でベッドで横になっていて、そばには目に涙を浮かべる母親の姿もありました。
父親は「息子は昨夜あった砲撃による破片があごから突き刺さった。家族みんなで家にいたときに砲撃による爆発があり、パジャマのまま逃げた。私の母もろっ骨などを損傷し治療を受けているが、息子が最も深刻だ」とうなだれた様子で話しました。
医師は「残念ながら、きのう女の子1人が亡くなった。砲弾が飛び交うもとで毎日手術を行っている。これが今の状況だ」と話していました。