【ワシントン=大内清】バイデン米大統領は16日、ウクライナで民間人への無差別攻撃を続けるロシアのプーチン大統領について、「戦争犯罪人だと思う」と非難した。ホワイトハウスで記者団に語った。米メディアによると、ウクライナ侵攻をめぐりバイデン氏が公にロシア側の戦争犯罪に言及したのは初めて。
露軍はウクライナへの侵攻開始以降、同国各地で病院、学校、住宅など軍とは無関係な民間施設や、民間人退避のために設けられた「人道回廊」への攻撃を繰り返している。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によると、ウクライナの民間人死者は少なくとも約700人、負傷者は1100人以上に上る。
サキ米大統領報道官は16日の記者会見で、バイデン氏の発言は「苛烈な独裁者による野蛮な行動」を目の当たりにした「心からの言葉」だと述べた。
ウクライナ侵攻をめぐっては、米国務省が戦争犯罪の有無を調査しているが、 バイデン氏や政府高官はこれまで、露軍による戦争犯罪の認定には慎重だった。戦争犯罪を阻止するためにウクライナへの介入を深めざるを得なくなることへの警戒があるとみられる。
これに対し、米議会では上院が15日にプーチン氏を戦争犯罪者として非難するとともに、国際刑事裁判所(ICC、本部ハーグ)や各国による戦争犯罪捜査を奨励するとの決議を全会一致で採択するなど、バイデン政権にロシアへの強硬姿勢をいっそう明確にするよう求める圧力が高まっていた。
ウクライナ侵攻ではICCは捜査を開始しているが、非加盟国のロシアが容疑者の引き渡しや捜査への協力に応じる可能性は極めて低い。
米国もICCに加盟しておらず、イラクやアフガニスタンでの米兵が関与した戦争犯罪についての捜査に反対している。