7日、ベラルーシで開かれたロシアとウクライナの3度目の停戦交渉(タス=共同)
7日、ベラルーシで開かれたロシアとウクライナの3度目の停戦交渉(タス=共同)

ロシアのウクライナ侵攻で、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT、電子版)は16日、停戦を協議する双方の代表団が合意案の作成をめぐり「重要な進展」を遂げたと伝えた。合意案はウクライナが北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念する一方で、ロシアが撤兵するなどとする内容。両国高官も同日、「停戦合意が近い」との見方を示した。ただ、プーチン露大統領はこの日、軍事活動を継続する意向を表明しており、停戦合意の先行きはなお不透明だ。

FTが複数の関係者の話として伝えたところによると、停戦合意案は15項目からなり、ウクライナのNATO加盟断念▽米欧側からの安全の保証と引き換えに他国軍基地の設置の排除▽ウクライナ軍の維持▽ロシア語の公用語指定▽ロシア軍の撤退-などが含まれる可能性がある。双方の代表団はここ数日、オンライン形式で交渉を続けてきた。

ウクライナ大統領府長官顧問のポドリャク氏は16日、米テレビとのインタビューで「ロシアは態度を軟化させた」とし、停戦は近いとの考えを表明。FTの報道は「ロシア側の要求内容だ」とした。

一方、タス通信によると、露代表団のメジンスキー大統領補佐官は同日、「ウクライナはスウェーデンやオーストリア型の中立化」を提案していると指摘。ラブロフ露外相も「合意に近づいている」と述べた。

ただ、実際に合意に達する保証はない。ポドリャク氏はFTに対し、ロシアが停戦条件とする南部クリミア半島(ロシアが2014年に併合)へのロシアの主権承認と東部の親露派2地域の「独立」承認について、停戦合意と切り離して継続協議とする考えを示した。しかし、ロシアはこれらの要求に固執している。

さらにプーチン氏は16日の政府会議で「現在の戦いはロシアの主権と将来、国家存続のためのものだ」と述べ、作戦を継続する意向を表明。英国防省はロシアが増援部隊をウクライナに派遣する動きを見せていると分析しているほか、ロイター通信によると、米ホワイトハウスのサキ報道官も16日、「軍事行動を弱める兆候は見られない」とロシアの交渉への意欲に懐疑的な見方を示した。

事実、ロシアは東部マリウポリで16日、住民が避難していた劇場を空爆。多数が死傷した恐れがあるとウクライナメディアが伝えるなど、ロシアは無差別的な攻撃を継続している。