ロシアによる侵攻が続くウクライナの情勢について、英国防省は17日、露軍の侵攻が「全ての前線で総じて失速している」との見方を示した。欧米メディアは露軍の死者が約7000人に達したとする西側当局者の見方を報道。露軍は被害の拡大を避けようと遠距離からの砲撃や空爆を強化する傾向にあり、ウクライナ側の民間人を巻き込む被害も増え続けている。

 英国防省は17日に公表した分析で、ウクライナ軍の抵抗が続く中、「露軍はこの数日、陸海空で最小限の前進しかできておらず、重大な損失を被り続けている」との見方を示した。米紙ニューヨーク・タイムズは「米海兵隊が太平洋戦争の硫黄島の戦いの36日間で約7000人を失ったのに対し、プーチン大統領の軍隊は20日間でそれ以上の兵隊を失っている」とする米情報当局の推計を伝えた。英紙ガーディアンは侵攻した露軍が装備の約10%を失ったとの見方も報じている。

 ただ、露軍はウクライナの都市などを狙った砲撃や空爆を続けている。露軍の包囲が2週間以上も続く南東部マリウポリの市議会は17日、市内に今も35万人以上が取り残されていると明らかにし、「1日平均で50~100個の爆弾が航空機から落とされている」と指摘。市内の住宅の約8割が被害を受け、そのうち約3割は修復不可能という見方を示した。

 ウクライナメディアによると、北東部ハリコフ郊外のメリファでは17日、露軍による砲撃で学校などが被害を受け、21人が死亡、25人が負傷した。首都キエフでも同日、砲撃による火災が相次ぎ、少なくとも2人が死亡した。ウクライナ国防省の報道官はキエフ近郊に集結する露軍が首都の本格侵攻を始める可能性が「残っている」と警戒を示す一方、首都防衛にウクライナ軍の「陸軍や空挺(くうてい)団などの最良の部隊が加わっている」とも強調した。

 オンライン形式で続いているウクライナとロシアの停戦協議も、目立った結果は公表されていない。ウクライナ側代表のポドリャク大統領府長官顧問は17日、ツイッターに「交渉は複雑で、両国の立場は異なっている」と投稿。「我々にとって根本的なのは(安全保障の)不可侵性だ」として、ウクライナの安全を保証する枠組みを求めていく考えを改めて強調した。【ロンドン横山三加子】