ロシアでウクライナ侵攻に反対する国民を「裏切り者」と決め付け、糾弾する動きが強まっている。プーチン大統領は16日の政府会議で「ロシア国民は真の愛国者と裏切り者を見分けることができ、たまたま口に入ってきた虫のように簡単に(裏切り者を)吐き出すことができる」と発言。国民への抑圧が一層強まり、ロシアの前身のソ連のような全体主義体制への回帰が加速するとの懸念が広がる。

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 プーチン氏は、裏切り者の排除は「社会の自浄作用」であり「われわれの連帯と結束、あらゆる挑戦に立ち向かう覚悟を強化する」と強調。スパイを意味する「第五列」という言葉も使い、「欧米はわれわれの社会を分裂させ、ロシアの市民対立を誘発し、第五列を用いて目的を達成しようとしている」と主張した。

 実際に元政権幹部も含めて侵攻に反対した人の排除が始まっている。プーチン政権で要職を務めたドボルコビッチ元副首相は14日公開の米メディアのインタビューで「戦争は人生で直面する可能性がある最悪の出来事だ」「私の思いはウクライナ市民と共にある」と反戦の立場を表明した。

 これに対し、プーチン政権与党「統一ロシア」幹部のトゥルチャク上院第1副議長は「まさに国家に対する裏切りであり、大統領が言う第五列そのものだ」と非難。ドボルコビッチ氏は18日、先端技術の研究を後押しする政府系財団の総裁職を辞任した。

 反政権派のカシヤノフ元首相は「プーチンはロシアの破壊に向けた行動を強化し、政権に同意しない人々に対する大規模な抑圧の開始を表明している」とツイッターに投稿。「これは既に歴史上起きたことだ」と恐怖政治の再来に警鐘を鳴らした。