ロシア国防省が19日、ウクライナ西部にあるミサイル貯蔵施設を露軍の空中発射型の新型ミサイル「キンジャル」で破壊したとの発表内容について、疑義が浮上している。同省がソーシャルメディアで公開した着弾の様子を捉えたとする動画を米メディアなどが検証したところ、撮影地点はウクライナ東部の農業地帯とみられることが明らかになった。毎日新聞も同じ手法で確認した。
キンジャルは速度マッハ10、射程2000キロ以上の戦闘機搭載型兵器で、米国のミサイル防衛システムでも迎撃は困難とされる。露国防省の発表によると、新型兵器で攻撃したのは西部デリャチンのミサイル貯蔵施設で、実戦使用は初めてとみられている。
露国防省はツイッターなどで攻撃の瞬間を上空から捉えたとする動画を公開し、「高命中精度ミサイル兵器によるウクライナ軍兵器倉庫の破壊。この監視ビデオには、地下の兵器・弾薬格納庫にミサイルが正確に命中した様子が記録されている」と説明した。
しかし、動画に映る建物などの特徴とグーグルアースで公開されている衛星画像を比較して調べた結果、撮影場所は東部の農業地帯の可能性が高い。米メディアや専門家はロシアが公開した動画について、ミサイル貯蔵施設が破壊されたのであれば爆発規模が小さいなど疑義を指摘している。露軍がキンジャルを使用した可能性はあるが、主張通りにミサイル施設が破壊されたかは定かではない。
ロシア国防省は20日にもウクライナ南部クリミア上空からキンジャルを発射し、南部ミコライウにあるウクライナ軍の燃料貯蔵施設を破壊したと発表した。【金寿英】