ロシアのプーチン大統領はウクライナ侵攻が行き詰まり、西側諸国による制裁の痛手が表れ始めた中で危険なほどに暴走する恐れがあるとバイデン政権当局者は一段と懸念を強めている。
匿名を条件に話した政権高官らの内部評価では、プーチン大統領は追い詰められた場合、引き下がるのではなくエスカレートする傾向がある。プーチン大統領の選択肢にはウクライナの都市に対する無差別爆撃や化学兵器、さらには戦術核兵器の使用が含まれる可能性があるという。
米国と欧州の同盟国が直面している最も困難な課題の1つは、ロシアの軍事作戦が計画通りに進んでいない兆候がある中で、ますます常軌を逸した行動を取りさらに危険になりかねない人物の次の動きを予測することだ。ウクライナ軍を速やかに制圧できなければ、西側諸国の情報機関が「垂直的エスカレーション」と呼ぶ核兵器の使用を含むリスクが高まる。
バイデン大統領は21日、プーチン氏が「追い詰められた状態にある」と指摘し、「さらに追い詰められれば、彼が取り得る戦術の深刻さは増す」と警戒感を示した。
北大西洋条約機構(NATO)は24日の首脳会議で、化学兵器および核兵器による攻撃の脅威に対する防御を強化することで一致した。記者会見で可能性のある攻撃についての証拠を問われたバイデン大統領は、「あなた方に情報機関のデータを教えるつもりはない」とした上で、「彼がそれを使えばわれわれは対応する。だが、対応の性質は使われた兵器の性質次第だ」と述べた。
NATOはロシアが化学物質を大量破壊兵器として使う可能性に関してさまざまなシナリオを研究していると当局者は明かした。「偽旗作戦」としては、ウクライナの農業で使用されている大量のアンモニアや塩素、硝酸塩を生産する化学工場での事故を装うことが考えられる。ロシアはウクライナが致命的な危険を招いたと非難し、より破壊的な兵器で対応するシナリオだ。
また、ロシアが毒性の高い物質を広範囲に拡散し得る化学兵器を使用するシナリオもある。だが、こうした攻撃に出れば、直ちにロシアの責任となり、プーチン大統領がそうした状況を避けたいかどうかは不明だという。
ただ、国防総省高官は今週、ロシアが化学・生物兵器による差し迫った攻撃を準備している証拠を米国は目にしていないと記者団に話していた。ロシア当局はそうした兵器を使用する意図を繰り返し否定しており、軍事作戦は計画通りに進んでいるとしている。
原題:Putin Stirs U.S. Concern That He Feels Cornered and May Lash Out(抜粋)