ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻の開始から1か月余りとなります。ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる30日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
ウクライナ北部の州知事「ロシアの攻撃はやんでいない」
ロシアが軍事作戦を大幅に縮小すると表明したウクライナ北部のチェルニヒウについて、チェルニヒウ州のビャチェスラフ・チャウス知事は30日、自身のSNSに動画を投稿し「ロシアの攻撃はやんでいない」と述べ、今もロシア軍による攻撃が続いていると述べました。そのうえでチェルニヒウでは一晩中、空爆や砲撃などの攻撃を受けたとしたうえで図書館やショッピングセンター、それに民家などが破壊されたとしています。
チャウス知事は「ロシアは軍事作戦を縮小すると言ったが私たちは信じることができるだろうか。もちろん、信じることはできない」と話し、引き続きロシア軍による攻撃に備える考えを示しました。
ロシア 戦闘継続しながら交渉に臨む考えか
ロシアとウクライナが29日行った停戦交渉受けて、ウクライナ側の代表団は、今後2週間かけて安全保障の枠組みに入る可能性がある関係国との間で協議を始めるなど具体的な調整に入りたい考えです。
これに対してロシア代表団のトップ、メジンスキー大統領補佐官は「ウクライナの提案を検討し対案を出す用意がある」として、ロシア国防省は首都キエフ周辺などで軍事作戦を大幅に縮小すると発表しましたが、東部での軍事作戦は継続する方針で、コナシェンコフ報道官は30日、ドネツク州でウクライナ軍の燃料施設などをミサイルで破壊したと明らかにしました。
ロシアとしては、戦闘を継続しながらウクライナとの交渉に臨む考えで、安全保障の枠組みなどをめぐり、プーチン大統領がどのような判断を行うかが焦点となります。
ウクライナからの国外避難401万人超に UNHCRまとめ
UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、29日の時点で401万人を超えました。
避難先はポーランドがおよそ233万人、ルーマニアがおよそ60万人、モルドバがおよそ38万人、ハンガリーがおよそ36万人などとなっています。
またロシアに避難した人はおよそ35万人となっています。
WFP事務局長「世界が食糧危機のおそれ」
国連のWFP=世界食糧計画のビーズリー事務局長は29日、国連安全保障理事会にオンラインで出席し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まる以前から、世界では食糧価格や輸送コストなどの高騰によって子どもを含む数百万人に対する食糧の配給に支障をきたしていたと指摘しました。
そのうえで「ウクライナは世界の穀倉地帯でなくなり、食糧供給を受ける側になってしまった。第2次世界大戦以降見たことがないような影響が出るだろう」と述べ、今回の軍事侵攻を受けて世界が今後深刻な食糧危機に直面するおそれがあると警告しました。
キエフ周辺 ロシア軍の動き停滞か
ロシアが軍事作戦を大幅に縮小すると発表したウクライナの首都キエフ周辺では停戦交渉の前からウクライナ兵が、ロシア軍の動きが停滞しているという情報を伝えていました。キエフ近郊のブロバルイで28日に撮影された映像には家屋や農家の牛舎が破壊された様子や銃を持って警戒にあたるウクライナ兵の姿が確認できます。兵士の1人は、「われわれに向けられる軍事行動は少なくなった。ロシア軍の装甲車や歩兵の動きは鈍く、損害を被ったため今は十分な戦力がない」と話していました。
“ロシア軍 キエフ包囲に失敗” 英国防省
イギリス国防省は29日、戦況の分析を公表し、ウクライナ軍によるたび重なる反撃で、「キエフを包囲する目的で行われたロシア軍の攻勢が失敗したのはほぼ確実だ」と指摘しました。
また、キエフ周辺で軍事作戦を縮小することに関連するロシア側の発表や、ロシア軍の一部の部隊をこれらの地域から撤退させたことを示す情報が伝えられていることから「ロシア側がこの地域で主導権を失ったと受け入れたことを示している可能性がある」としました。
安保理でも停戦交渉議論
ウクライナ情勢をめぐって国連の安全保障理事会で会合が開かれ、ロシアとウクライナの停戦交渉について、アメリカはロシア側の行動を見極める姿勢を示したのに対し、ロシアは交渉について言及しませんでした。
このうちアメリカはシャーマン国務副長官が出席し、「ロシアが何を言うかではなく、何を行うかが焦点だ」と述べ、ロシア側の具体的な行動を見極める姿勢を示しました。そのうえで、「この人道的な大惨事を終わらせる唯一の方法はロシア軍の完全撤退だ」と強調しました。
一方、ロシアのネベンジャ国連大使は、現地の人道状況には配慮しているなどとこれまでの主張を繰り返しましたが、今回の停戦交渉については言及しませんでした。
南部ミコライフで州庁舎にロケット弾 12人死亡か
ウクライナ南部の都市ミコライフでは、州庁舎がロケット弾による攻撃を受け、海外メディアは当局者の話としてこれまでに12人の死亡が確認されたと伝えています。
ミコライフ州のビタリー・キム知事は29日、州庁舎がロシア軍の攻撃を受けたとSNSで明らかにしました。
ロイター通信などは当局者の話として、この攻撃でこれまでに少なくとも12人の死亡が確認され、33人が負傷したと伝えています。最新の戦況地図はこちら
ゼレンスキー大統領 停戦交渉の行方には慎重な見方
ウクライナのゼレンスキー大統領は29日、公開したビデオメッセージの中で、ロシアとの停戦交渉について、「前向きな合図といえるが、この国を破壊しようとする力の代表者のことばを信じる理由はない」と述べました。
また、ロシア軍が首都キエフ周辺などで軍事作戦を大幅に縮小すると決めたとしたことについて、「ロシア軍は攻撃を加える態勢を維持しているので、われわれの防衛態勢も維持したままだ」と述べ、停戦交渉の行方について、慎重な見方を示しました。
ロシア財務省 4月の国債償還はルーブル払いの方針
ロシアの財務省は29日、4月4日に償還期限を迎えるドル建ての国債について、自国通貨のルーブルで買い戻す方針を発表しました。
それによりますと、今月30日までに買い戻しに応じる意向を示した投資家に対して、ロシア中央銀行の公式為替レートをもとにルーブルで支払うとしています。
今回の国債の償還や利払いは21億ドル余り、日本円でおよそ2500億円に上り、ロシアが当面、支払わなければならない償還や利払いの額としては最も多いため、経済制裁で外貨準備の半分近くが凍結される中でもドルによる支払いができるのか、市場の警戒感が続いています。
アメリカ国防総省「本当の撤退ではなく再配置」
アメリカ国防総省のカービー報道官は29日、記者会見で、ロシア軍の首都キエフ周辺での動きについて、小規模の部隊が離れたとする一方で「これは本当の撤退ではなく、再配置だ」と述べ、撤退が行われているとは捉えていないという姿勢を強調しました。
そのうえで「われわれは、ほかの地域への大規模な攻勢を警戒する必要がある。ロシア軍は目標としていたキエフの制圧に失敗したが、キエフへの脅威が終わったわけではなく、今も、キエフを含むウクライナ国内でロシア軍は大規模な残虐行為を行うことができる。実際にきょうも、キエフに対する空爆が続いたのを確認している」と述べました。
バイデン大統領 欧州首脳と電話会談 軍事侵攻やめるまで制裁確認
ロシアとウクライナによる停戦交渉を受けて、アメリカのバイデン大統領は29日、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアの4か国の首脳と50分余りにわたって電話で会談しました。
このあと、ワシントンで行われた記者会見でバイデン大統領は、ロシア国防省が首都キエフ周辺などで軍事作戦を大幅に縮小するとしていることについて、ロシアによる行動を注視していくことで5か国が一致したと明らかにしました。
また、記者団から、ロシア側の発言が停戦に向けたものなのか、新たな侵攻に向けた時間稼ぎなのかと問われたのに対し、バイデン大統領は「ロシアの行動を確認するまで予想することはしない」と述べました。
さらに会談では、ロシアが軍事侵攻をやめるまで強い制裁を科していくことや、ウクライナ軍に対する支援を続けていくことも確認したということです。
マクロン大統領 プーチン大統領と市民避難を協議
フランスのマクロン大統領は29日、ロシアが攻勢を強めている東部の要衝マリウポリからの市民の避難を支援する人道的な作戦について、プーチン大統領と電話で協議しました。
マクロン大統領は今月25日、トルコ、ギリシャとともに作戦を行う方針を示していて、フランス大統領府によりますと、会談でプーチン大統領はマクロン大統領の提案について検討すると答えたということです。
一方、ロシア大統領府によりますと、プーチン大統領は「市民への人道支援や安全な避難はマリウポリを含め、ロシア軍により確保されている。人道問題を解決するには、ウクライナの民族主義者の戦闘員が武器を置き、抵抗をやめなければならない」と強調したとしています。
英 ロシア人所有の「スーパーヨット」差し押さえ
イギリス政府は、29日、ロシアに対する経済制裁の一環として、ロシア人が所有する「スーパーヨット」と呼ばれる豪華船を差し押さえたと発表しました。
所有者はイギリスの経済制裁の対象ではないものの、プーチン大統領に近い「オリガルヒ」と呼ばれる富豪の1人だとしています。
当局によりますと、船には巨大なワインセラーやプールが付いていて、価格は3800万ポンド、日本円でおよそ61億円にのぼるということで、船はマルタの旗を掲げるなど、所有者がロシア人であることが意図的に隠されていたとしています。
モルドバ 一時帰宅のウクライナ避難民で国境混雑
ウクライナの隣国モルドバには、28日の時点で38万人余りがウクライナから避難してきています。ウクライナとの国境に面した東部のパランカでは29日、徒歩や車でモルドバに入国してくる人たちの姿が見られました。
その一方で、モルドバからウクライナに向かう人たちの車も列を作っていました。
その多くは、国境から50キロほどの所にあるウクライナ南部のオデッサからモルドバや近隣国に避難している人たちだということで、避難生活に終わりが見えない中、家族を迎えに行ったり自宅に荷物を取りに行ったりするため、一時的に帰宅するということです。
ウクライナ公共放送はユーチューブ発信続ける
ウクライナの公共放送は動画投稿サイト、ユーチューブで現地の状況を連日、国内外に英語で発信しています。
29日に公開された放送では、ウクライナ南部の都市ミコライフで、州庁舎が29日にロケット弾による攻撃を受け、これまでに7人の死亡が確認されたと伝えています。
また、西部のルツクにある燃料の貯蔵施設で、27日夜、ロシア軍の攻撃によって火災が起きたと伝えています。
さらに、東部ハリコフ州で、シェルターとして使われている地下鉄の駅に住民が避難している様子も伝えています。
マリウポリ市長補佐役 東部地域の独立承認「絶対譲れない」
ロシア軍による激しい攻撃が続くウクライナ東部のマリウポリで市長の補佐役を務め、現在は国内の別の都市に避難しているペトロ・アンドリュシェンコ氏がNHKのオンラインインタビューに応じました。
アンドリュシェンコ氏は、マリウポリ市内での死者数がおよそ5000人にのぼっているとする一方、市内で戦闘が続いており、いまも被害の全容は判明していないと強調しました。
また、今月16日に破壊された劇場で、少なくとも300人が死亡した可能性があるという見方を改めて示したうえで「攻撃が続いていて、救助隊員も死亡している。劇場のがれきは撤去できていない」と述べました。
親ロシア派の武装勢力が事実上、支配している東部地域の独立承認については「絶対に譲れない。日本人は北方領土を永遠に渡せるだろうか」と強調しました。
そしてアンドリュシェンコ氏は「防衛組織の採用の事務所には長い列ができていて、今は募集は行っていない。戦争が続くかもしれないが、私たちは戦うことができる」と述べ、徹底抗戦を続ける考えを示しました。
米ブリンケン国務長官「ロシアに真剣さの兆候 見られない」
ロシアとウクライナによる対面形式の停戦交渉について、アメリカのブリンケン国務長官は訪問先のモロッコで「効果的に物事を前進させるものは見られない。ロシアに真剣さの兆候が見られないからだ」と指摘しました。
そして「ロシアによる発言と行動のうち、注視しているのは行動だ。ロシアが行うべきことは、軍事侵攻や砲撃をやめ、軍の部隊を引き揚げることだ」と述べ、ロシア軍を速やかに撤退させるよう重ねて求めました。
一方、ロシア国防省が、ウクライナの首都キエフ周辺などで軍事作戦を大幅に縮小するとしていることについては「ウクライナ東部での戦闘に集中するという侵攻の方向転換なのか、人々を欺くための手段なのか、軍の部隊が大きな損失を受けたことによる再編成なのかわからない」と述べ、今後のロシア軍の出方を見極めていく考えを示しました。
ロシア国防省 東部での作戦に重点を置く姿勢改めて示す
ロシア国防省は、29日、ショイグ国防相がウクライナでの戦況について報告した内容を動画付きで公開しました。
この中でショイグ国防相は、軍事作戦の第1段階の主要な目的は達成されたとしたうえで「ウクライナ軍の戦闘能力が非常に低下したので、主要目的の達成に集中することができる。それは、ドンバスの解放だ」と述べウクライナ東部での作戦に重点を置く姿勢を改めて示しました。
また、NATO=北大西洋条約機構の加盟国がウクライナに対して対空ミサイルシステムなどを供与する動きを注視しているとして「もし実現された場合には、相応の対応をする」と警告しました。
ロシア軍の苦戦が伝えられる中、ショイグ国防相の動静に関心が集まっていましたが、国防省としても今月26日に続いて本人の活動について公表した形です。