ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる5月1日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

トルコ大統領首席顧問 キーウ訪問し停戦仲介に意欲示す

ロシアとウクライナの仲介を続けるトルコのカルン大統領首席顧問が30日、キーウを訪問し、ゼレンスキー大統領らと会談しました。

会談のあとカルン首席顧問は、政府系通信社アナトリア通信などに声明を発表し「戦闘とロシアからの攻撃が続いていることが交渉を困難にしている」として、戦闘の長期化によって停戦交渉が厳しくなっているという認識を示しました。

そのうえでロシアとの対話の窓口を閉ざせば戦闘の停止は望めないとして「引き続きロシアとの接触を続けている。ロシアを交渉のテーブルにつけ、和平合意に向けた説得にあたる」と述べ、困難な状況の中でも停戦に向けた仲介の努力を続ける意欲を示しました。

米ペロシ下院議長 キーウ訪問し連帯を強調

アメリカのペロシ下院議長は30日、ウクライナの首都キーウを訪れゼレンスキー大統領と会談しました。

会談ではまずゼレンスキー大統領が「アメリカは、ロシアの攻撃に対してウクライナを強力に支援する真のリーダーだ。ウクライナの主権と領土を守るために支援してくれていることに感謝したい」と述べました。

これに対してペロシ下院議長は「自由を勝ち取るために戦い続けてくれていることへの感謝を伝えたかった。私たちは自由を守る戦いの最前線にいて、これはすべての人のための戦いだ。あなた方の戦いが終わるまで支援し続ける」と述べ、ウクライナとの連帯を強調しました。

4月24日にはアメリカのオースティン国防長官とブリンケン国務長官がキーウを訪れていて、アメリカの要人によるウクライナ訪問が相次いでいます。

イギリス国防省「南部ヘルソンでロシアよりの統治を実現」

イギリス国防省は、1日に公表したウクライナの戦況分析で、ロシアが掌握したと主張する南部のヘルソン州について「ロシアは中心部のヘルソン市を3月初旬に占領して以来、ロシア寄りの統治を実現し市や周辺の地域での支配を正当化しようとしている」と指摘しました。

また、最近ヘルソンから出されている声明がウクライナによるヘルソンの統治は不可能だと宣言し、ヘルソンで使用する通貨を4か月間かけてロシアのルーブルに移行するとしていることについて、イギリス国防省は「ロシアがヘルソンで長期にわたり政治的・経済的に強い影響力を行使していく意図を示しているとみられる」と分析しています。

そのうえで「ロシアにとって、南部のヘルソンとその交通網を掌握することは、北部や西部への侵攻の足がかりになるとともに、クリミアでの支配をより強固にするものだ」という見方を示しています。

林外相 モンゴル外相と会談 ウクライナ情勢で国際社会連帯を

ロシアの隣国、モンゴルを訪れている林外務大臣は、バトツェツェグ外相と会談し、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対し、国際社会が連帯して対処していく必要性を強調しました。
林大臣は記者団に対し「中国とロシアに挟まれ、地政学的に重要な位置にあるモンゴルを日本の外務大臣として1年半ぶりに訪問し、ロシアの軍事侵攻に対し、国際社会の連帯が強く求められている旨を働きかけた。日本としては、引き続きG7=主要7か国をはじめとする関係国と緊密に連携し、国際社会に直接、訴えかけていきたい」と述べました。

岸田首相 ベトナムで首脳会談 ウクライナ即時停戦などで一致

ベトナムを訪れている岸田総理大臣は、ファム・ミン・チン首相と首脳会談を行い、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐり即時停戦と人道支援が重要だという認識で一致し、大量破壊兵器による威嚇や使用、民間人への攻撃に反対することを確認しました。
岸田総理大臣は記者団に対し「ベトナムはロシアと伝統的な関係があり難しい立場だが、即時停戦や人道支援の重要性で一致でき、初めてウクライナへの人道支援を表明したことは前向きな一歩と評価できる。国際法違反や力による現状変更の試みをアジアを含めてあらゆる地域で許してはならないという認識で一致したことも大きな一歩だ」と述べました。

ゼレンスキー大統領「ロシア軍 オデーサの空港を破壊」

ウクライナのゼレンスキー大統領は、30日、新たなビデオメッセージを公開し、ロシア軍のミサイル攻撃により、南部オデーサの空港の滑走路が破壊されたことを明らかにしました。この中で、ゼレンスキー大統領は、「私たちは空港を再建するが、オデーサはこのようなロシアの態度を決して忘れないだろう」と述べ、ロシア軍の攻撃を強く非難しました。

そのうえで、ロシア軍の動きについて、「新たな攻撃のため東部で追加の部隊を集めている。ロシアはハルキウ州に増援部隊を送り込み、ドンバス地域に圧力をかけようとしている。ロシアは無意味なこの戦争で、2万3000人以上の兵士を失っているが彼らはやめない」と述べ、東部でさらなる攻勢の準備を進めているという見方を示しました。

十分な軍事支援届けばウクライナ反撃か ウクライナ大統領府顧問

ウクライナの通信社「ウクルインフォルム」は、ウクライナ大統領府の顧問のアレストビッチ氏が「5月下旬か6月上旬には必要な数の兵器が供与され、戦場に大きな影響を与え始める」と地元メディアに述べたと先月27日、伝えました。アレストビッチ氏は欧米から十分な軍事支援が届けば、ウクライナ軍は反撃に転じるという見方を示したということです。
欧米諸国は相次いでウクライナへの軍事支援の強化を打ち出し、ポーランド政府は200両以上の戦車を供与する可能性があると報じられています。
一方、ロシア通信によりますと、ロシアのラブロフ外相は30日、中国メディアとのインタビューで「アメリカやNATOがウクライナの危機の解決に本当に興味があるならまずは兵器と弾薬の供与をやめるべきだ」と述べ、欧米をけん制したということです。

ウクライナ 少なくとも2899人の市民死亡 うち210人は子ども

国連人権高等弁務官事務所は先月29日、ロシアによる軍事侵攻が始まったことし2月24日から先月28日までに、ウクライナで少なくとも2899人の市民が死亡したと発表しました。このうち210人は子どもだとしています。
地域別でみると、キーウ州や東部のハルキウ州、北部のチェルニヒウ州、南部のヘルソン州などで1488人、東部のドネツク州とルハンシク州で1411人の死亡が確認されているということです。
また、けがをした市民は3235人にのぼるとしています。
一方、国連人権高等弁務官事務所は東部のマリウポリなど激しい攻撃を受けている地域での死傷者の数については集計が遅れていたり、確認がまだ取れていなかったりして統計には含まれておらず、実際の死傷者の数はこれを大きく上回るとの見方を示しています。

マリウポリの製鉄所から市民20人避難 アゾフ大隊がSNSで明らかに

ウクライナの「アゾフ大隊」の副司令官は、多くの市民が避難しているとされ人道的な危機が続くウクライナ東部の要衝マリウポリのアゾフスターリ製鉄所から20人の市民が避難したと30日、SNSで明らかにしました。
このなかで副司令官は「がれきから救出された市民たちが合意された場所に移された。女性と子どもの合わせて20人がウクライナの支配下にある南東部のザポリージャに向かうことを望んでいる」と述べました。
そのうえで「私たちはロープでがれきから市民を救出している。この手続きが継続しすべての市民が避難できるよう願っている」と述べ、製鉄所の中に残されたほかの市民の避難も進むよう訴えました。
またロシア国営のタス通信は30日、子ども6人を含む25人がアゾフスターリ製鉄所から出たと伝えています。今回20人ほどの市民の避難が実現した背景など詳しいことは分かっていませんが、マリウポリからの避難をめぐっては国連が全力を尽くす姿勢を示していました。

プーチン大統領 掌握主張の地域などの退役軍人に一時金支給決定

ロシアのプーチン大統領はウクライナ東部2州で親ロシア派の武装勢力が事実上、支配する地域とロシア軍が掌握したと主張しているウクライナの地域に住む第2次世界大戦の退役軍人を対象に1万ルーブル、日本円にしておよそ1万8000円を一時的に支給することを決めました。
ロシア大統領府によりますと、この措置は大戦で旧ソビエトがナチス・ドイツに勝利して今月9日で77年となるのを記念して行われるもので、プーチン大統領は先月30日、これを定めた大統領令に署名したということです。プーチン政権としてはロシア国内と同じく「戦勝記念日」を祝う機運を高め、この地域の支配の既成事実化を進めたいねらいがあるものとみられます。

ゼレンスキー大統領「占領者たちを追い出さなければならない」

ウクライナのゼレンスキー大統領は30日、国境付近などでロシア軍と戦う国境警備隊の代表らを首都キーウに集めて演説し「ロシアの悪はまだ私たちの領土にいる。占領者たちを追い出さなければならない」と述べ、ロシア軍に徹底抗戦する姿勢を改めて強調しました。
またロシア軍が掌握したと主張している東部のマリウポリでは、国境警備隊の部隊も応戦を続けているとして「マリウポリを勇ましく守っている国境警備隊の戦士たちに感謝の気持ちを表したい」と述べました。そして「私たちのすべての兵士らがすぐに勝利を目にすることを願っている」と述べ、ロシア軍に抗戦し領土を守り抜くよう指示しました。
演説は「国境警備隊の日」に合わせて行われたもので、大統領は国境警備隊の代表らに勲章を授与して功績をたたえました。

アンジェリーナ・ジョリーさん 西部のリビウを訪問

難民の支援に取り組んでいるハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが30日、ウクライナ西部のリビウを訪れ、子どもたちと触れあいました。また鉄道の駅では国内から避難した人たちの支援にあたるボランティアと会話し「子どもたちは大きなショックを受けているでしょうね」などと子どもたちを気遣っていました。
ジョリーさんはUNHCR=国連難民高等弁務官事務所の特使を務めていますが、AP通信はウクライナの訪問は私的なものとみられると伝えています。

ロシアが掌握と主張のヘルソン州 レーニン像が再建との投稿

ウクライナのヒョードロフ副首相兼デジタル転換相は、ロシアが掌握したと主張する南部・ヘルソン州のノバ・カホウカにロシア革命の指導者レーニンの像が再建されたと30日、ツイッターに投稿しました。
ウクライナとロシアがひとつの国を構成していた旧ソビエトを象徴するレーニンの像を建てることで市民に旧ソビエト時代を思いおこさせ、ロシアによる支配の既成事実化、いわゆる「ロシア化」を進めたいねらいがあるとみられます。

イギリス国防相 5月9日にプーチン大統領が戦争状態宣言の可能性

イギリスのウォレス国防相は、30日までに地元ラジオ局の番組に出演し、第2次世界大戦で旧ソビエトがナチス・ドイツに勝利した5月9日のロシアの「戦勝記念日」に、プーチン大統領がウクライナとの間で戦争状態にあることを宣言する可能性があるという見方を示しました。

ロシアはウクライナへの軍事侵攻についてこれまでのところ、「特別軍事作戦」と表現し「戦争」ということばは使っていません。

またプーチン大統領はウクライナのゼレンスキー政権を一方的にナチス・ドイツになぞらえ、「非ナチ化」の必要性を繰り返し強調しています。

ウォレス国防相は具体的な情報があるわけではないとしながらも、プーチン大統領が「ナチス」と戦争状態にあると宣言し、戦うためにロシアの国民を大勢動員する必要があるなどと主張する可能性を指摘しました。

東部のイジューム付近 ウクライナ軍が抵抗する様子の動画を公開

戦闘が激化しているウクライナ東部ハルキウ州のイジューム付近で、ウクライナ軍がロシア軍に抵抗する様子をうつした動画が30日、公開されました。
ウクライナの内務省が公開した映像では、ウクライナ側の攻撃によって次々と煙があがる様子が捉えられ、ウクライナ側は、ロシア軍の戦車や戦闘用の車両などを砲撃したとしています。

ウクライナ東部の戦況について、アメリカ国防総省の高官は、29日、ロシア軍がイジュームから南に向け徐々に前進しているものの、ウクライナ側の激しい抵抗に直面しているという分析を示し、今後、この一帯が激戦地になるという見方が広がっています。

ウクライナから国外に避難した人 546万人余りに UNHCR

UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、29日の時点で546万人余りとなっています。

主な避難先は、ポーランドがおよそ301万人、ルーマニアがおよそ81万人、ハンガリーがおよそ51万人、モルドバがおよそ44万人などとなっています。

また、ロシアに避難した人は、およそ65万人となっています。