[ザポロジエ(ウクライナ) 3日 ロイター] – ロシア軍は3日、民間人が脱出したウクライナ南東部マリウポリのアゾフスターリ製鉄所に対する攻撃を再開した。東部ドネツクや南部オデーサ(オデッサ)、ポーランド国境に近い西部リビウなどへの砲撃も行った。仏ロ首脳が電話会談を行うなどの外交努力も続けられたが、ロシアが報復的経済制裁を打ち出すなど対立は深まっている。
<ロシア軍の攻撃続く>
ロシア国防省は3日、ロシア軍がオデーサ港近くの軍用飛行場をミサイルで攻撃し、米国や欧州の同盟国がウクライナに供給したドローン(小型無人機)のほか、ミサイルや弾薬などを破壊したと表明した。
また、リビウのアンドリー・サドビイ市長は、3日夜の空爆で発電所が損傷し、一部の地区で停電していると明らかにした。
このほか、ドネツク州のアビディフカでコーキング工場がロシア軍の砲撃を受け、州知事によると少なくとも10人が死亡、15人が負傷した。ウクライナ大統領府は、ドネツク地域は絶えず砲撃にさらされているとしている。
<マリウポリの製鉄所から民間人脱出>
国連の人道問題調整官はこの日、アゾフスターリ製鉄所から101人の民間人脱出に成功し、南部ザポロジエで人道支援を受けていると発表。ただ、マリウポリのボイチェンコ市長によると、同製鉄所には依然として200人以上の民間人が残されている。
ロシアによる侵攻前のマリウポリの人口は約40万人。現在も約10万人の市民がまだ市内にとどまっているという。
ウクライナのイリーナ・ベネディクトワ検事総長はこの日、ロシアはウクライナ侵攻にあたりレイプを戦術の一環として利用しているとし、ロシアのプーチン大統領は「21世紀の主要な戦争犯罪者だ」と非難した。
<外交努力>
この日は英国のジョンソン首相がウクライナ最高会議(議会)でオンライン演説を行い、ウクライナに対する一段の軍事支援の提供を表明。「ウクライナは勝利し、自由を勝ち取る」と述べ、電子戦装備や対砲台レーダーシステムを含む総額3億ポンド(3億7500万ドル)の追加軍事支援の提供を確約した。
また、フランスのマクロン大統領はプーチン大統領と電話会談を実施。ロシアによる黒海の港封鎖でウクライナの食料輸出が制限されている問題の解決に向け、マクロン氏が国際機関と取り組む意思があると伝えたほか、ドンバス地方とマリウポリの状況を深く懸念しているとし、停戦の必要性を改めて訴えた。
ドイツのショルツ首相は、ロシアがウクライナで国際法に違反したことを考慮するとロシアが他国を攻撃する可能性は否定できないと指摘。またフィンランドとスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)加盟を決定したらドイツは支持すると表明した。
<制裁措置>
ロシア大統領府はこの日、プーチン大統領が「一部の国や国際機関の非友好的行為」に対する報復的経済制裁の大統領令に署名したと発表。制裁の対象となる個人や団体は明らかにしていないが、制裁対象の個人・団体への製品や原材料の輸出が禁止される。
一方、欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表はEUが策定している対ロシア制裁第6弾について、原油産業を対象とするほか、より多くのロシアの銀行が「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除されると明らかにした。
EUの執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長は4日に新たな制裁措置の案を公表する見通しで、ロシア産原油の輸入を年末までに禁止する措置が盛り込まれるとみられている。