ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる29日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
東部ルハンシク州知事「敵は戦果をあげていない」
ウクライナのテレビに出演した東部ルハンシク州のガイダイ知事は28日、セベロドネツクをめぐる戦況について「セベロドネツクはウクライナのもとにある。敵は戦果をあげていない。ロシア軍は拠点としている郊外のホテルにとどまっていて市内の中心部に前進できていない」と述べ、ウクライナ軍が攻撃に持ちこたえているという認識を示しました。
その上で「ロシア軍は旗を掲げて動画を撮影し、セベロドネツクを制圧したとSNSに投稿している」と述べロシア軍が一方的にプロパガンダを流していると訴えました。
米 戦争研究所「セベロドネツク ロシア攻撃ピーク」
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、28日に発表した戦況分析で、ロシア軍は東部ルハンシク州のセベロドネツクをまだ包囲してはいないものの、攻撃を繰り返し仕掛け、支配地域を広げていると指摘しています。
この動きについて戦争研究所は「プーチン大統領はセベロドネツクを占領すればこの戦争に勝てるかのように兵士や弾薬を投入しているが、それは間違っている」としたうえで「セベロドネツクをめぐる戦いのあと、どちらが勝ったとしても、そこでロシア側の攻撃は作戦面、戦略面ともピークを迎え、その後はウクライナ側に反撃を始めるチャンスが訪れるだろう」という見方を示しました。
そして「セベロドネツクを占領できたとしても、ロシアにとってルハンシク州全域を掌握したと宣言する以外、軍事的・経済的な利益をもたらすものではない」として、ロシア側がわずかな見返りのために大きな戦力を投入していると指摘しています。
ロシア駐英大使「戦術核は使われない」
ロシアのアンドレイ・ケリン駐英大使は、28日、イギリスの公共放送BBCのインタビューでロシア軍が局地的な攻撃に使用する核兵器「戦術核」をウクライナで使う可能性があるか聞かれたのに対し「ロシアの軍事ドクトリンに基づけば、戦術核は今回のような紛争では全く使われない。戦術核の使用には非常に厳しい規定があり、主に国家の存在が危機にさらされた場合に使うことになっている」と答えたうえで「現在の軍事作戦とは何の関係もない」と強調しました。
さらに「ウクライナ東部では、通常兵器による限定された作戦で対処する。現地の部隊を増強しないのは、現在の状況に対処するのに十分だと信じているからだ」と述べ、核兵器使用の可能性を否定しました。ロシアによる核兵器の使用をめぐっては、プーチン大統領がウクライナへの侵攻開始後のことし2月、核戦力を念頭に、抑止力を特別警戒態勢に引き上げるよう命じたことなどから、各国の間で警戒が続いています。
またインタビューで、ケリン大使は、首都キーウ近郊のブチャで多くの市民が殺害されているのが見つかり、欧米がロシアによる戦争犯罪だと非難していることについて「ロシア軍が撤退した当初、地元の市長は、市内は平穏で、路上に遺体はないという声明を出したが、その後変わった。われわれは停戦交渉を妨害するためのでっちあげだと見ている」などと改めて主張しました。
ゼレンスキー大統領「状況は非常に困難」
ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、新たに動画を公開し「状況は非常に困難だ。特にロシアが成果を得ようとしている東部のドンバス地域とハルキウ州がそうだ」と述べ、東部で戦況が厳しくなっているという認識を示しました。
そのうえで、ウクライナ側にとってルハンシク州内の最後の拠点ともされるセベロドネツクなどいくつかの町にロシア軍の攻撃が集中していて、ゼレンスキー大統領は、ウクライナ軍は持ちこたえているとしながらも「情勢はことばで表せないほど厳しい」としています。
そして「ウクライナ軍は技術的にも攻撃能力的にもロシア側を上回る局面に近づいている。ただ、それはウクライナのパートナーたちがわれわれの自由を守るために必要なものを提供する用意がどれだけあるかにかかっている」と述べ、欧米各国によるさらなる軍事支援の重要性を強調しました。
また南部のミコライウでもロシア軍による砲撃があったことを報告し、幼稚園近くの住宅街が被害を受け1人が死亡し、7人がけがをしたということです。
そのうえで、ゼレンスキー大統領は「ウクライナはすべてを取り戻す。必ずだ。そのためにできることすべてを行っている」と述べ、ロシア軍を退けるため、全力を尽くす考えを改めて強調しました。
マリウポリ 工場跡地のがれきから約70人の遺体
ウクライナの公共放送は28日、動画投稿サイト、ユーチューブで公開した動画で、ロシアが完全に掌握したとしている東部ドネツク州のマリウポリで、工場の跡地のがれきからおよそ70人が遺体で見つかったとしています。
このような場所がほかに何か所あるかは分かっていないと伝えています。
同じドネツク州で子どもを連れた一家が車で避難する様子も伝えられ、この中では、3歳の男の子の父親がロシア軍の砲撃によって一家の目の前で亡くなったとしています。
また、ロシア軍が全域の掌握を目指す東部のルハンシク州では、州内最後の拠点ともされるセベロドネツクをはじめ各地でロシア側による砲撃があり、建物への被害が相次いでいると伝えています。
一方、南部のミコライウでも住宅街がロシア軍に砲撃され、複数の民間人がけがをしたということです。
ウクライナから国外に避難した人は673万人に UNHCR
UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、27日の時点でおよそ673万人となっています。
避難先別には、ポーランドがおよそ358万人、ルーマニアがおよそ98万人、ハンガリーがおよそ67万人、モルドバがおよそ47万人などとなっています。また、ロシアに避難した人はおよそ97万人となっています。
一方、国外に逃れたあと、戦況を見ながらウクライナに帰国する人の動きも出ています。
プーチン大統領「欧米の兵器供与は人道危機の悪化を招く」
ロシアのプーチン大統領は28日、フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相との3者による電話会談を行い、欧米によるウクライナへの相次ぐ兵器の供与について「事態のさらなる不安定化と人道危機の悪化を招くおそれがある」と警告しました。
デンマーク ウクライナに対艦ミサイル「ハープーン」を供与
ウクライナのレズニコフ国防相は28日、国防省の公式サイトで、ウクライナへの軍事支援の一環として、イギリスの協力も得てデンマークから対艦ミサイル「ハープーン」が供与されると明らかにしました。
ロイター通信は「ハープーン」をウクライナ側が受け取る作業が始まったと伝えています。
対艦ミサイル「ハープーン」は、ロシア軍の艦船が黒海の港を封鎖するなどして海上輸送を妨害し、ウクライナからの小麦などの輸出が滞るなか、ウクライナからの求めに応じてデンマークが供与を表明していました。
レズニコフ国防相は、ウクライナ軍の対艦ミサイル「ネプチューン」と合わせて活用することで「黒海を解放して安全を取り戻し、オデーサを確実に守ることができるだろう」と自信を示しました。
ロシア軍 契約軍人の年齢上限を撤廃
ロシアのプーチン大統領は28日、軍の兵役について定めた法律の改正案に署名し、軍と契約できる年齢の上限を撤廃しました。
ロシア軍は、徴兵制度とは別に、軍との契約で有給で勤務する「契約軍人」の制度がありますがこれまで、契約できる年齢の上限はロシア人が40歳、外国人は30歳となっていました。
ロシアのパンコフ国防次官は、契約の上限について、実際には「50歳までを見込んでいる」と説明しています。
ロシア軍はウクライナへの侵攻の長期化で、死者数が増え続けているとみられますが、ロシア国防省は、3月下旬に1351人だと発表して以降、人数を公表していません。
一方、イギリス国防省は、23日、旧ソビエトがアフガニスタンに侵攻した9年間での死者数に相当する、およそ1万5000人にのぼる可能性が高いと指摘しています。
ロシアとしては、契約の上限撤廃で、対象を広げ、兵力を補う狙いがあるものと見られます。
マリウポリの港にロシアの船
ウクライナ東部の要衝マリウポリの港に28日、ロシア軍がマリウポリの掌握を宣言して以降、初めてロシアの船が入りました。
この船についてロシア国営のタス通信は28日、港の担当者の話として、今後およそ2700トンの金属を積み込んで160キロほど離れたロシアのロストフ州に向かう予定だと伝えました。
これに対してウクライナ議会の人権担当者はSNSへの投稿で「一時的に占領された土地からの略奪が続いている。彼らは穀物に続いて、今度はマリウポリから金属を運ぼうとしている」として強く非難しています。
ウクライナ 子ども 少なくとも242人が死亡
ロシアの軍事侵攻で死亡、またはけがをした子どもの数について、ウクライナの検察当局は、28日の時点で少なくとも242人が死亡し、440人がけがをしたと発表しました。
死亡、またはけがをした子どもが最も多いのは、東部ドネツク州で153人、次いで首都があるキーウ州で116人、東部ハルキウ州で108人、北部チェルニヒウ州で68人などとなっています。
また、爆撃や砲撃による被害を受けた学校などの教育施設は1888か所にのぼり、このうち180か所は完全に破壊されたということです。