インターナショナルスクールの日本への進出ラッシュが続いていてる。目新しいのはその中に世界の名だたる名門校が含まれていることだ。アジア、特に中国からの富裕層の獲得を狙うことを視野に入れており、立地などの条件から日本が注目されているようだ。
岩手県八幡平市。英国系の「ハロウインターナショナルスクール安比ジャパン」は奥羽山脈に建設中の施設にこの夏、180人の生徒を迎え入れる予定だ。最終的に900人の生徒が学べるこのキャンパスでは、東京ドームが2つ入る約9万平方メートルの敷地にアートセンターやスポーツセンター、テニスコートなどが入る。
全寮制で、近辺のスキー場やゴルフ場でのレッスンも提供する同校の年間の学費は850万円から。過去に東京のインターナショナルスクールでの校長経験もあるミック・ファーリー校長は、台湾を含めた中国からの同校への関心はとても高いと話す。
今後、日本で新規設立される学校の中には英国系のハロウインターナショナルスクール安比ジャパン、ラグビースクールジャパン、マルバーン・カレッジ東京が名を連ねる。これにより、今後数年で少なくとも新たに3000人以上の生徒を日本のインターナショナルスクールに収容できるようになる。
学費は高いところでは年間1000万円近くかかるが、アジアの富裕層を緑豊かな自然の中の施設、国際的な教育内容や豊富な課外活動で誘い込もうとしている。
それに加えて安全で、コロナ関連の制限が厳しくない中で対面式で質の高い教育が受けられる魅力がある。中でも中国の富裕層からの注目が高い。厳しいゼロコロナ政策や政治環境の足かせから逃がれようと海外に目を向け始めているためだ。
中国は規制強化
「中国以外での機会を探していた」と、アジア、特に中国でのハロウの拡大を管轄してきたファーリー氏は話す。「中国での教育機会の提供はとても複雑になった。インターナショナルスクールやバイリンガルプライベートスクールにはより規制がかかり、コントロールされるようになった」という。
インターナショナルスクールに関するデータを提供する英ISCリサーチによると、規制強化が始まる前、中国のインターナショナルスクールへの生徒登録数は、現地資本経営の学校も含めると毎年10%以上の成長を見せていた。
だが今年に入り、政府が中国籍の生徒が通う学校に対しグローバルやインターナショナルなどの言葉を学校の名前に付けることを禁止したあと、ハロウ北京校は学校の名前を変更した。駐在員など外国籍保有者が通学できる北京のスクールは影響を受けていないという。
コロナ禍が始まり2年以上経過しても、突然のロックダウン(都市封鎖)やリモート授業など強力なゼロコロナ政策が実施される可能性が残る中国に対して、日本は先進国の中で最も低いコロナ致死率を保ちながら、人々の生活は平常に戻りつつある。
日本政府も後押し
日本政府も国際金融センターとしての地位確立のために必要な高度外国人材を呼び込むため、海外トップ校の誘致を奨励。金融庁は学校用地のマッチングや融資制度の拡充の検討もしている。
国際教育評論家で学校投資やコンサルティングを行うセブンシーズキャピタルホールディングスグループ最高経営責任者(CEO)の村田学氏は「富裕層はリスクを避けるために海外に出ようとする。日本政府が香港の投資家を誘致しようとする中、ハロウはそこを拾いながら中国本土からくるマーケットも拾っていこうとしている」と指摘した。
マルバーン・カレッジ東京は東京都小平市にある大学跡地を改修し来年9月に開校予定。国際的に通用する大学入学資格である国際バカロレアに基づいた教育を提供し、最終的には小学校から高校まで生徒950人の規模にする予定。マルバーン校は香港、中国、エジプト、スイスにも姉妹校がある。
「中国本土で更に開校する予定があったときもあるが、それは延期になったままだ」と、マルバーン香港校の創立校長で日本のプロジェクトの責任者であるロビン・リスター氏は話す。「今は東京に集中するのがいい時期だと判断した」。