岸田改造内閣がきのう発足した。新内閣の看板は有事に対応する「政策断行内閣」と総理自ら記者会見で表明した。その心意気はとりあえずは“良し”としよう。だが気になることがいくつかある。思いつくままにあげてみる。まずは旧統一教会との関係。組閣後の記者会見で何人かの大臣が協会との関係を認める発言をしている。組閣にあたっての前提条件は協会との関係を見直すことだった。過去に関係があったとしてもすぐに問題になることはないだろうが、新任閣僚の時限爆弾がいつ爆発するかわからない。支持率低下に先手をうった内閣の電撃的改造だけに、協会との根深い関係が暴露されれば致命傷になりかねない。旧統一教会の排除は「脱安倍」でもあるわけで、この問題は簡単に収まらない気がする。脱安倍を推進すればアベノミクスの扱いも問題になるだろう。

アベノミクスにはいろいろな評価がある。単純に何をどうするという問題ではないだろう。とはいえ、安倍元首相が積極財政を推進してきたことは間違いない。岸田総理はどちらかといえば健全財政派だ。ウクライナ情勢をはじめ台湾をめぐる米中の対立、日本を取り巻く安全保障環境の厳しい現実、有事にともなう施策のすべては予算に負荷がかかる。「政策断行内閣」というのは簡単だが、大幅な財政赤字を抱えている現状で、財政健全化に思いを馳せる首相の「脱安倍」はそんなに簡単ではない。その調整がすぐに改造内閣に襲いかかってくる。来年度予算編成に向けた概算要求の取りまとめ、それと同時並行で第2次補正予算の編成も急を要する。すべての派閥を取り込んだ挙党内閣とはいえ、閣内には積極財政派と健全財政派が同居する呉越同舟内閣でもある。舵取りは意外に難しい気がする。

それを調整するのが政調会長に就任した萩生田氏ということになる。「(俺は)骨格ではないのか」とい新聞報道に噛みついた上、組閣を前にした総理との個別会談では経産大臣留任を強く希望した。にもかかわらず結果は閣外。政調会長という重要ポストで処遇されたが、幹事長、総務会長との息を合わせることができるのか、素人目にも気になるところだ。それ以上に安倍最側近を自称する萩生田氏は、健全財政派の総理と政策の将来展望を共有できるのか。仮に自説を曲げて総理との呼吸を合わせるようなことになると、安倍派の反発が強まる可能性がある。国際情勢が激変する中で日本の政治にも経済にも圧力がかかりはじめている。「聞く耳を持つ」と自認する総理の弱みは、外部環境や他人のアドバイスに敏感に反応しすぎることだ。今回の組閣に対してメディアは比較的好意的な反応を示している。そんな時こそ、目に見えない落とし穴がどこかに隠れているかもしれない。