米航空宇宙局(NASA)の新型ロケット「スペース・ローンチ・システム」=17日、米南部フロリダ州のケネディ宇宙センター(NASA提供・時事)
米航空宇宙局(NASA)の新型ロケット「スペース・ローンチ・システム」=17日、米南部フロリダ州のケネディ宇宙センター(NASA提供・時事)

 【ワシントン時事】米航空宇宙局(NASA)は19日、人類の月面再訪を目指す「アルテミス計画」のミッション第1弾を米東部時間29日午前(日本時間同日夜)に実施すると発表した。今回は無人の宇宙船を打ち上げるテスト飛行。将来的には1972年以来、約半世紀ぶりに人類が月面を歩くことが目標だ。

時事ワード解説「人類の月面再訪」

 第1弾では、新型ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」に無人宇宙船「オリオン」を搭載し、月周回軌道に投入する。オリオンは約42日後に地球へ帰還し、10月10日に太平洋へ着水する予定だ。

 米南部フロリダ州のケネディ宇宙センターでは、発射準備が進んでいる。既にSLSを発射台に移動させており、打ち上げまでに最終調整を行う。悪天候などで29日の打ち上げが見送られた場合は、9月2日か5日の実施を予定している。

 第1弾が成功すれば、第2弾で有人宇宙船を月周回軌道に投入。第3弾で人類の月面再着陸を実現する計画だ。NASAは2025年の再着陸を目指しており、着陸候補地を13カ所に絞った。その際には、初めて女性が月に降り立つと予告している。

 人類がアポロ11号で初めて月面に着陸したのは1969年。世界的な関心を集めたが、「無駄遣い」といった批判などを背景に、72年12月のアポロ17号を最後に月から遠ざかっている。

 ただ、近年になり中国が無人機の月面着陸を成功させる中、米国は再び宇宙開発競争に乗り出した格好だ。NASAはギリシャ神話に登場する月の女神の名を冠した今回の計画の先に、火星の有人探査も視野に入れている。

 NASAの主任探査科学者ジェーコブ・ブリーチャー氏は、記者団に「われわれは胸が躍る冒険の始まりにいる」と強調。「地球における生命の誕生に関する洞察も得られるだろう」と探査の意義を訴えた。計画には日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)なども参画している。