【ワシントン時事】米国主導の新たな経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の参加各国は20日、9月上旬に閣僚級会合を開き、正式交渉の開始を宣言する方向で調整に入った。日米やインドを含む全14カ国が出席する見通し。IPEFの全体像が見えてくる節目の場となりそうだ。
「中国抜き」の枠組み警戒 習政権、自国含む貿易体制維持に躍起
IPEFはバイデン米大統領が5月の訪日時に発足を表明した。中国への対抗を念頭に、民主主義の価値観を共有する国が貿易・投資上の共通ルールを設ける枠組み。貿易、サプライチェーン(供給網)、インフラ・脱炭素、税と反汚職の4分野で構成される。14カ国は現在、交渉の大枠を決める「予備交渉」を行っている。
オーストラリアのファレル貿易相は米メディアに対し、9月9日に米ロサンゼルスでIPEFの閣僚級会合を開く予定だと明らかにした。各国が参加したい分野を自由に選べる柔軟な制度設計で、分野ごとに参加国や交渉目標などを最終決定する。IPEFの求心力を維持するため、合意できた分野から順次発効させる方針だ。
IPEFは新型コロナウイルス禍やロシアによるウクライナ侵攻で国際供給網のもろさが露呈したことを教訓に、経済安全保障の観点から「脱中国依存」を図る枠組みでもある。ペロシ米下院議長による台湾訪問をきっかけに地政学的リスクが高まる中、参加国間で供給網の混乱を早期に察知し、警告を発するシステムの構築に最優先で取り組む。
米国は2023年にアジア太平洋経済協力会議(APEC)の議長国を務める予定で、同年秋の開催が見込まれる首脳会議までに一定の成果を挙げたい考えだ。
対米輸出拡大を期待していた東南アジア諸国連合(ASEAN)には、IPEFに米国の関税引き下げが含まれなかったことへの不満が根強いため、新興国などがメリットを受けられるよう別の条件を設ける。マレーシアは先進国による技術支援や、ルール導入時の猶予期間を要求。韓国はルール作りに民間企業が積極的に関与できるよう求めている。