[ワシントン 2日 ロイター] – 米労働省が2日発表した8月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は市場予想を若干上回る伸びとなったものの、賃金の伸びが鈍化し、失業率が3.7%に上昇した。労働市場が緩み始めていることが示唆され、米連邦準備理事会(FRB)がリセッション(景気後退)を引き起こすことなく、米経済を鈍化させることができるという「慎重ながらも楽観的」な見方が広がった。
シチズンズのグローバル市場担当マネージング・ディレクター、エリック・マーリス氏は「過熱した労働市場が徐々に冷え込むことは、インフレ圧力を緩和するために米経済が必要としていることかもしれない」と指摘。「FRBは、労働参加率の上昇と時間当たり賃金の伸び鈍化に勇気づけられるだろう」と述べた。
非農業部門雇用者数は前月比31万5000人増加。7月分は52万8000人増から52万6000人増に若干下方修正された。6─7月分では10万7000人分下方修正された。
8月は20カ月連続で雇用が増加。雇用は現在、パンデミック(世界的大流行)前の水準を24万人上回っている。
ロイターがまとめた市場予想は30万人増。予想は7万5000人増から45万人増まで幅があった。
8月は幅広い分野で雇用が増加。専門職・企業サービスが牽引し、6万8000人増となったほか、ヘルスケアは4万8000人増加した。
小売業は4万4000人、製造業は2万2000人それぞれ増加した。レジャー・接客は3万1000人増となったが、1─7月の月平均(9万人増)を大幅に下回った。
レジャー・接客の雇用はパンデミック前の水準をなお120万人下回っている。
JPモルガンの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・フェローリ氏は「雇用の増加は米経済がすでにリセッションに陥っているとの見方の反証となり、ソフトランディング(軟着陸)がまだ可能だとの期待につながる」とした。
また、一部のエコノミストは8月の雇用の伸び鈍化を深読みしないよう指摘。今回の回答率は2006年以来の低水準だったとし、「8月の雇用の伸びは当初の数値より力強いかもしれない」(ムーディーズ・アナリティクスのシニアエコノミスト、ライアン・スウィート氏)とした。
失業率は3.7%で、前月の3.5%から上昇し、半年ぶりの高水準となった。ただ、家計調査によると、78万6000人が労働力として参入しており、失業率の上昇はこれが理由。労働力人口は1月以降、大幅に増加しており、2019年12月の過去最高を上回った。
この結果、労働参加率は62.4%と、7月の62.1%から上昇した。ただ、パンデミック前の水準をなお1%ポイント下回っている。
もっとも8月の労働力人口の急増は季節的要因に加え、働き盛りの世代の労働参加率が上昇したためで、一部のエコノミストは継続的な労働力人口の増加に懐疑的だ。ブリーン・キャピタルのシニア経済アドバイザー、コンラッド・デクワドロス氏は「9月には失業率の低下傾向が再開する」とした。
労働力人口が増加する中、賃金の伸びは鈍化している。
時間当たり平均賃金は0.3%上昇と、7月(0.5%上昇)から伸びが鈍化した。前年同月比も5.2%上昇にとどまった。
平均週間労働時間は34.5時間と、7月の34.6時間から減少した。
経済的な理由によるパートタイム労働者は7月の390万人から410万人に増加した。