[ワシントン 9日 ロイター] – 世界銀行とウクライナ政府、欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会が9日に発表した報告書で、ロシアの侵攻がウクライナに対して6月1日までに970億ドルを超える直接的な損害を与えたほか、同国再建に3490億ドルの費用が必要になる可能性があることが分かった。
再建費用はウクライナの2021年国内総生産(GDP、約2000億ドル)の約1.6倍に当たる。
数値はいずれも速報値で、戦争が続けば増加が見込まれると指摘。
「家族の離散や固有の文化遺産の破壊などを通して、(ロシアによる)侵攻の影響は何世代にもわたって継続する」とした。
報告書によると、ロシアの侵攻でウクライナは経済の流れや生産に支障を来たしたり、戦争に関連した費用が発生したりしたことで2520億ドルの損失を被ったと指摘。ウクライナ国民全体の約3分の1が逃げたことにより、貧困率は侵攻前にわずか2%だったのが21%に跳ね上がることが予想されている。
うち1050億ドルは数千の学校や、500を超える病院の再建といった緊急の優先課題に対処するために必要とされた。住宅の修復や暖房の復旧、ガスの購入といった冬への備えも不可欠とされた。
世銀の東欧地域担当ディレクター、アルプ・バナジー氏は、今回の調査結果は国際的に認められた「非常に強力な」方法に基づいており、10月25日にベルリンで開催予定の主要7カ国(G7)の復興会議の土台となるべき資料だと訴えた。
その上で、戦争の流れが劇的に変化しない限り、ウクライナは2023年を通して外部からの支援が必要になると指摘。ウクライナ経済は懸念されていたよりも「やや良好」に推移しているとしながらも、再建ペースは戦争の推移に大きく左右されるとし、再建には何年もかかるとの見方を示した。
ウクライナのシュミガル首相は、初めての包括的な戦争の被害評価となる今回の報告書は復興計画への資金提供の土台になると指摘。ウステンコ大統領経済顧問は、ウクライナは23年を通して毎月50億ドルの支援が必要になるとの見方を示した。