Peter Elstrom、日向貴彦、Anto Antony
- 数十億ドルの資金を調達、振り向け先候補の一つにスタートアップ
- パフォーマンスなど複数の課題も、業績悪化で人員削減にも着手中
ソフトバンクグループの孫正義社長が、ビジョン・ファンド3号の設立に向けた議論を再開したと事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
情報が非公開のため、匿名を条件に語った関係者らによると、孫社長は数十億ドルの資金を調達し、振り向け先の候補の一つとしてスタートアップに投資するファンドの設立を検討している。新ファンドの金額規模などに関しては現時点で明らかになっていないという。
ソフトバンクGの広報担当者のコメントは得られていない。ビジョン・ファンド3号の可能性については米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が先に報じていた。
孫社長は、2016年に人工知能(AI)関連企業に投資する10兆円規模のビジョン・ファンド1号の設立計画を発表した。その後、18年9月に行われたブルームバーグのインタビューでは、2-3年ごとに同規模のファンドを設立することを想定していると述べていた。
孫正義氏のビジョン、ベンチャーキャピタル業界に旋風-桁違いの投資
19年7月にソフトバンクGや孫社長の自己資金でビジョン・ファンド2号を設立。配車アプリの米ウーバー・テクノロジーズや韓国の電子商取引大手のクーパンへの投資などで成功する半面、シェアオフィスの米ウィーワークや金融のグリーンシル・キャピタルでは失敗し、同社の業績は浮沈を繰り返した。
21年3月期には日本企業として最大の純利益を上げたが、22年3月期は一転、同社として最大の純損失を記録した。今年4-6月期(第1四半期)は出資先企業の株式価値の低下が続き、3兆1627億円の損失とさらに赤字が拡大した。
6月末の現金・現金同等物は6兆円超
8月に開示した決算短信によると、ソフトバンクGは6月末時点で約6兆707億円(14日の為替レートで約425億ドル)の現金および現金同等物を保有していた。その後、筆頭株主として保有するアリババグループ・ホールディング株式の売却を発表したことから、関係者の1人は、現金および現金同等物は6月末時点よりも増えていると話した。
孫社長が3号ファンドの他にどのような選択肢を考えているかは不明だが、社内ではソフトバンクGの非公開化についても繰り返し話しているという。
3号ファンドの計画を進める上ではいくつかのハードルがある。一つはファンドのパフォーマンスだ。投資データを提供するプレキンによると、1号ファンドの今年3月までの内部収益率(IRR)は11%、2号ファンドは0%と業界平均の約38%、同45%をそれぞれ下回っている。
また、ソフトバンクGでは現在、これまで急拡大してきたビジョン・ファンドの大規模な人員削減に着手している。こうした動きは長期で信頼を構築し、資金運用を任せたい外部の投資家から信用を損なう行為と受け取られる可能性がある。
ブルームバーグは2日、ソフトバンクGがビジョン・ファンド事業で最大2割以上の人員削減を行う可能性があると報じた。孫社長は8月の決算説明会で「次に行うのはコスト削減」だとし、人員削減は「シニアやジュニア、フロントやバック」など「聖域なく、世界的に行うべき」と語っていた。
ソフトバンクG、ビジョン・ファンド人員を2割以上削減へ-関係者
原題:SoftBank’s Son Is Said to Discuss Setting Up Third Vision Fund(抜粋)