[香港 12日 ロイター] – 中国共産党が16日から開く第20回党大会では、政治局常務委員会を中心とした新指導体制の人事が注目を集めている。中でも中国次期首相の筆頭候補と目されているのは、国政助言機関である人民政治協商会議(政協)の汪洋主席(共産党序列4位)だ。広東省の共産党トップだった頃はリベラル気風を発揮していたが、習近平政権になってからは目立たなくなっている。
香港と接する広東省で産業の高度化と社会的包摂政策を推し進めて頭角を現した。2011年末の烏坎村の土地収奪を巡る対立では、腐敗官僚を解任し、翌春にはデモ隊のリーダーを草の根選挙に参加させ、国際的な称賛を得た。
しかし、広東省でのこうしたリベラルな動きは後退。10年前に習氏が中国の指導者になり、権威主義の道をさらに歩むようになってからは、メディアや労働団体などの市民社会に対してさらなる規制が課されるようになった。
67歳の汪氏は、李克強首相が来年3月に退任する際、その後継者の有力候補の1人と見なされている。
経済運営を仕切る首相は党序列2位の職だが、習氏が自らの権力を強化し、経済管理に対する国家の支配力を強めるにつれて、その影響力は低下しているとみられている。
10代で食品工場に就職し、母子家庭を支えたたたき上げの汪氏はその後、中国最高指導者だったトウ小平氏の目に留まり、胡錦濤前国家主席と親密な関係を築いたとされる。
10年以上前、広州で行われた記者団との懇談会では、時にはユーモラスな発言で、幅広い話題について語っていた。一般的な党トップの堅苦しいイメージとは対照的なスタイルだった。
中国専門家である香港中文大学の林和立客員教授はロイターに対し「彼は間違いなく、共産党政治局全体で最もリベラルな人物だ」と述べた。
汪氏は12年に最高指導部メンバーとなる党政治局常務委員への昇格が見送られたが、副首相として対米を含む中国の対外経済関係の統括に携わり、17年に常務委員に昇格した。
<団派>
汪氏は李克強首相や、もう1人の首相候補である胡春華副首相と同様、習近平派のライバルとされる党青年組織「共産主義青年団」による派閥(団派)とつながりがある。
しかし、過去5年間、党政治局常務委員会で習氏に忠実にふるまい、目立たないようにしてきたため、習氏の信頼を得ているはずだという党ウォッチャーもいる。
汪氏は政協主席として、最大100万人ものイスラム教徒が収容所に入れられている新疆ウイグル自治区に関する政策グループを率いていた。
国営の新華社通信によると、5月に国連人権高等弁務官が新疆を訪問する前、汪氏は同地のイスラム教少数民族が「幸福かつ安全」に暮らしていると述べた。
(James Pomfret記者)