[東京 14日 ロイター] – 政府は、深刻な需給ひっ迫時に大口企業への都市ガス使用制限令を可能とすると同時に、液化天然ガス(LNG)の調達を独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)に要請できるようにする。14日に関連法案を閣議決定した。ウクライナ情勢の深刻化でLNG供給の不確実性などが高まる中、需給両面から、万が一に備えた対策を整備する

閣議決定したのはガス事業法改正案と独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構法の一部を改正する法律案。今臨時国会に提出し早期成立を目指す。

需要面の対策となるガス事業法の改正では、企業や家庭が自主的に実施する「節ガス」に加え、企業に個別の需要抑制を求めても需給ひっ迫が解消されないなどの場合の最終手段として、経産相が大口企業に使用制限を命じることができる。電力分野では既にある制度と同様の制度をガス業界でも導入する。

一方、供給面の対策としては、必要量が確保できない企業に代わり国が調達できるようにするため、経産相がJOGMECに対し、LNGの調達を要請できる仕組みを導入する。

これまで発電用燃料については電気事業法により要請できたが、都市ガスにはなかった。日本ガス協会によると、2020年度の輸入LNGの35%が都市ガス、65%は発電用などに使用されている。

日本は比較的長期契約で、LNGの調達難の影響は限定的とは言え、予期せぬトラブルによる出荷停止も想定される。

LNGを巡っては、米テキサス州で同国最大級の液化天然ガス(LNG)プラントが火災事故を起こして操業が止まっている。ロシアの「サハリン2」については、事業や権益を移行する新会社を設立。三井物産と三菱商事は新会社への参画をロシア政府から承認されたが、今後も新たな株主間協定書の交渉など協議は続く見通し。日本が輸入するLNGの約9%がサハリン2からのもの。

さらに、マレーシアの国営石油会社ペトロナスが、地すべりにより天然ガスパイプラインが損傷したことで、供給義務を免れる「不可抗力条項」(フォースマジュール)を宣言。マレーシアは、日本のLNG輸入量の13.6%(2021年)を占め、豪州に次ぐ調達先で、東京ガスや東邦ガスなどがLNGを購入するなど、今冬の需要増大を前に供給リスクは高まっている。

西村康稔経済産業相は同日の閣議後会見で、この冬にもガスの使用制限令に踏み込むかどうかについて「現時点で何か具体的な想定をしているわけではない」とした。